渋野日向子の言動を再検証。「天才」とは言わないが「凡人」ではない (4ページ目)
森口プロが言うように、多くのプロは、あの場面では距離を合わせにいくだろう。でも、勝つためには、そのほうが"非常識"と言える。ゴルフには「ネバーアップ、ネバーイン」という格言がある。つまり「(カップに)届かなければ、入らない」ということであって、これこそが"常識"なのである。
渋野は、そのとおりに打った。
そうして「ここで決めるか、3パットするか」という気持ちで打った瞬間、渋野は「自分でもびっくりするぐらいに強く打てた」と思ったそうだ。
「あっ、強かった」ではなく、「強く打てた」と言うのである。やはり渋野は"凡人"ではなかった。
最終ホールで待つギャラリーが、あまり見たくないシーンは、優勝争いの重圧に耐え切れず、カップの手前で哀れに曲がるパットである。
だが、渋野の打ったパットは、狙ったラインに勢いよく転がっていき、最後に"壁ドン"となって入るという、誰もできないようなウイニングパットとなった。グリーンを取り囲んだ大勢のギャラリーと、全世界で中継を見る人たちの期待に応えた渋野は、本当に『Folk heroine』になったのだ。
初の海外試合で、しかもメジャーの全英女子オープンで優勝するという快挙を達成した渋野は、今話題の「黄金世代」のひとりである。畑岡奈紗、勝みなみ、河本結、原英莉花、小祝さくら......など、技術も、メンタルもタフなプレーヤーがそろっているのはなぜだろうか。
森口プロは、こんな見解を示す。
「彼女らが子どもの頃に、宮里藍さん、横峯さくらさんといったゴルフの魅力を伝えるよき伝道師がいて、そのふたりを見て、多くのジュニアゴルファーが育ちました。それが"黄金世代"と言われる彼女たちで、今、日本女子プロ協会の登録で、その20歳の女子プロは20人以上もいるんです。
私の場合、プロテストで受かったのは私だけだったので、同期生はいません。そうすると、自ずと目線は先輩に向くことになり、出たての新人は『この試合は、樋口(久子)さん勝つだろうな』というように、思考にブレーキがかかることがある。
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