渋野日向子の言動を再検証。「天才」とは言わないが「凡人」ではない (3ページ目)

  • 古屋雅章●文 text by Furuya Masaaki
  • photo by Kyodo News

 12番パー4。グリーン手前に池がありながら、最終日はティーグラウンドを前に出して、1オンを狙わせるような設定となっていた。

 渋野は試合後、優勝のポイントとなったのはどこか? と問われて「12番のパー4でドライバーを持ったことです」と答えている。そして、「普通に当たれば池を越える距離だったので、朝から『ここは絶対にドライバーを持つぞ』と思っていました。自信はありました」と言った。

 森口プロも、このホールのティーショットが勝利への「ひとつのポイントだった」と言う。

「選手に攻め方の迷いを起こさせるこのホールで、渋野さんが迷わずドライバーを抜いたのを見て、『気持ちがブレていないな』と思いましたね。あと1ヤード足りなかったら池だったということを考えると、リスクを負ったショットではあったと思います。

 でも、あそこでドライバーを持てたということは、優勝争いの中にあっても、よそ行きのゴルフをしなかった、ということ。あれは、その後のプレーの自信につながったショットだったと思います」

 傍から見れば常識外のように見えたショットも、渋野にとっては決してギャンブルではなかった。現に、帰国後の記者会見で、自らの強みは何かと聞かれ、彼女は「緊張する場面でも振り切れるところです」と答えている。誰が打っても緊張するだろう場面でも、「自分が振り切れる」という確信があるからこそのドライバー選択だった。渋野にすれば、あくまでも"常識的"な攻め方だったのだ。

 そして、最終ホールのバーディーパットである。

 先に上がったリゼット・サラス(アメリカ)とは、同スコアで並んでいる。残ったパットは、約6mの下りのスライスライン。常識的にはプレーオフを想定し、ジャストタッチで合わせていって、外れてもパーでよし、とするような微妙なラインである。

 森口プロは、このパットにも驚きを隠せなかったと言う。

「私だったら(距離を)合わせにいきますよ。順位を考えると、保険をかけたくなる状況じゃないですか。でも、彼女はそうじゃない。

 3番ホールで4パットをして、普通なら、その後のパッティングは"緩む"もの。けど、彼女はその後のパットも、外した時はオーバーしていました。『勝ちたい』とは思っているのだろうけど、それで気持ちがザワつかない。『天才』とは言わないけど、『凡人』ではない。そして、彼女はかなり努力をしていると思う」

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