【木村和久連載】都市伝説もいっぱい。
アマチュアゴルファー英雄伝

  • 木村和久●文 text by Kimura Kazuhisa
  • 服部元信●イラスト illustration by Hattori Motonobu

 K泉さんは、ゴルフで一時期スランプになって、ゼロからやり直して見事に復活します。その体験苦労話をまとめたのが、1977年に刊行された『わがシングルへの道』(講談社)。若い時に読みましたが、K泉さんのマジメな姿勢に驚いたものです。

「スイング改造をゼロからやると、一旦(スコアが)100レベルまで落ちるがいいのか?」と、レッスンプロに言われたK泉さん。それでも、自己流をすべて捨てて再起をかけたのです。結果、シングルプレーヤーにまでなるのですから、大したものです。

 晩年、体調を崩してだいぶ痩せられたのですが、「この前、80台で回ったよ~」と、とあるテレビ番組でニコニコして語っていたのが、印象的でした。いろいろな武勇伝や都市伝説はありますが、本当にゴルフが好きなんだなぁと思いました。ある意味では、非常に幸せなアマチュアゴルファーだったのではないでしょうか。

 そしてもうひとり、先頃亡くなられた小池一夫先生。『子連れ狼』などを書かれた漫画原作者であり、作家、作詞家、脚本家などとしても有名ですが、そんな小池先生もまた、偉大なアマチュアゴルファーと言えます。

 実は、小池先生とは仕事で何度かお会いしていて、一緒にラウンドもさせてもらいました。そういう時の会話が面白くて、大笑いしていたものです。

 最初にラウンドした時は、「先生、子どもの頃からファンで、『オークション・ハウス』や『実験人形ダミー・オスカー』など読んでいました」と、挨拶しました。すると、小池先生は「おいおい、おまえ、いきなり持ち上げてくるな。何か企んでいるのか?」と、軽くジャブを打ってきてくれました。

 ラウンド中は、年齢を考えても、こっちのほうが飛距離で勝ります。そういう時は、小池先生は素直に「若いって素晴らしいねぇ~。(自分も)昔は『アイアンの名手』って言われたんだよ」と昔を懐かしみます。

 そうして、グリーン上ではロングパットをきっちり寄せて、右腕を指差しながら「パットにはお金をかけているから。若い者にはまだ負けないよ」と、ニコニコとされていました。

 小池先生は後輩の面倒見も非常によく、その日はカウンターバランスなど、当時流行っていたゴルフグッズを私にくれて、「また、会おう」と言っていただいて別れました。

 それからしばらくして、小池先生が主催者のひとりに名前を連ねる大コンペに呼んでくださいました。そこで、超大物の方と組ませていただくことに......。

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