「よかった時の自分は忘れる」堀琴音、完全復活へゼロからのスタート (2ページ目)

  • 金明昱●取材・文 text by Kim Myung-Wook
  • photo by Getty Images

 だが、堀自身はいたって前向きだ。昨季とは違って、気持ちの切り替えができているという。

「試合に出るからには優勝を目指したいです。このオフには、ショットの練習をずっと続けてきました。悪かった部分を重点的にこなして、パター練習もたくさんやりました。合宿はとても充実していましたから、徐々に調子を上げていきたいです」

 堀は昨年の夏から、原江里菜らを指導する森守洋コーチに師事した。原もかつて、若くして結果を残して脚光を浴びたが、一時シードを喪失する不振に陥った。しかし、そのどん底から這い上がって、再びシード選手に復活した経験を持つ。

 堀は、そんな自らの境遇に似た先輩にアドバイスを求め、森コーチを紹介された。そして、指導を受け始めると、すぐに「ミスの幅は少なくなり、自信を持って(クラブを)振れるようになった」と、その効果を語っていた。

 もちろん今も、「森コーチと原さんには、さまざまなアドバイスをもらっています。技術的にも、精神的な面でも、本当に助けてもらっています」と言う。目に見える結果として表には出ていないものの、復活への階段を着実に上がっていることは間違いないようだ。

 堀が語る。

「すべてがゼロから始まったので、おかしくなってしまったものを戻すのはなかなか難しい。それで、当初は過去によかった時のような、元の形に戻そうと思っていたのですが、その考えはやめました。今は、新たにイチから作り直すことを重点的に取り組んでいます。過去にとらわれることがないように」

 最もよかった時の自分は忘れる――そう、堀は言い切った。

 気持ちは吹っ切れた。もう後戻りはしない。あとは、現状の苦難に耐え、それを乗り越えて、結果を残していくしかない。

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