完全撤退を考えていたアン・シネ。それでも日本のQTに参戦したわけ (3ページ目)

  • 金明昱●取材・文 text by Kim Myung-Wook
  • photo by Getty Images

 ということは、来季はアン・シネがプレーする姿を日本で見られなくなるということ。日本のファンにとっては、残念なニュースになると思われた。だが――。

「我々が(アン・シネを)何度も説得して、彼女はギリギリのところで日本のQTに出る決心に至った」

 そう語るのは、アン・シネの日本でのマネジメントを担当する『NOW ON』の松宮由季氏だ。

「日本でこれだけ注目された選手。チャンスがあるなら、そこに挑戦すべき、と懸命に説得しました」

 ところが、アン・シネは当初、なかなか首をタテに振らなかったという。日本でいい結果を出せないことで、完全に自信を失ってしまっていたからだ。

 それが、土壇場になってQT参戦を決断したのは、「待っている日本のファンがいたから」とアン・シネは語った。

「(日本でのプレーに)本当に自信を失ってしまっていたんです。私に期待をしてくれる人たちを、失望させてしまうことがとてもつらかった。いい姿を見せられないので、とてもつらい思いを抱えていました。

 そうした状況のなかで、日本のファンは、もちろん私の結果にも期待してくれていると思うのですが、それ以上に(私が)元気にプレーしている姿を見て、楽しんでくれているんだ、ということがよくわかりました。そういう思いを知ったとき、『もっと日本でがんばりたい』『もっとがんばらないといけない』という思いが(自分の中で)膨らんでいきました」

 そうして、アン・シネは10月のセカンドQTから参戦。そのセカンドQT、続くサードQTは難なく突破し、無事にファイナルQTへと駒を進めた。

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