【木村和久連載】再編成が繰り返されてきたゴルフ場業界の現状は? (2ページ目)

  • 木村和久●文 text by Kimura Kazuhisa
  • 服部元信●イラスト illustration by Hattori Motonobu

 景気のいい頃は、額面1000万円のゴルフ会員権が、市場に流れると3000万円ぐらいで売れたのです。ゆえに、ゴルフ場を造る側は、有名設計家にゴルフ場の設計を依頼し、ひと儲けしようと目論むのでした。

 ひどいと、用地買収費用の何割かを銀行から借りて、あとはまだ完成もしていないゴルフ場の会員権を「特別縁故会員」という名目で、最低1000万円くらいからの価格設定にして、100枚、200枚と販売していたのです。

 ゴルフ場の運営業者には、これだけで10~20億円が入ってくるわけですからね。まるで欲しい分だけのお金を、造幣局に刷ってもらっているようなものです。

 それでも、会員権相場は上昇し、一般に3000万円ぐらいで売り出したときも即完売。ゴルフ場が完成する頃には、市場価格が1億円を超えるコースも現れて、それらは俗に「億カン」と呼ばれるようになったのです。

 ところが、バブル崩壊で景気が急速に後退し始めると、誰もが1億円のゴルフ場会員権を処分しようと思うわけです。おかげで、市場では"売り"が殺到するのですが、そんな泥船化した会員権を買おうという輩などおりません。その結果、相場は下がる一方でした。

 当時、ゴルフ会員権の処理方法、すなわち換金するには、名義の書き換えをして会員権市場に出す方法と、ゴルフ場に返還する方法のふたつがありました。それで、市場ではなかなか売れないとわかると、多くの人たちが「じゃあ、せめて会員証書に記された額面金額だけでも戻してもらおう」と後者を選択し、ゴルフ場に退会届を提出したのです。

 でも、ゴルフ場側は会員権を売って得たお金を、すでに建設費などで使ってしまっているので、そうした返済資金などありません。たとえば、額面1000万円だとしても、100人いれば10億円ですからね。

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