エンジン出力50%だった松山英樹。
帝王ニクラウスのように悔しがる

  • 三田村昌鳳●取材・文 text by Mitamura Shoho
  • photo by Getty Images

 けれども、今年のマスターズでは"松山らしさ"が影を潜めていた。

 初日のインタビューのときだった。今の状態を聞いた記者に対して、松山は「いつもの半分以下です」と答えた。

 いわば、本来の松山が、3000ccの排気量と、それに伴う性能を備えたレーシングカーだとすれば、今回は排気量が1500cc以下のマシン状態にありながら、それでレースを走り切らなければいけないのと同じことだ。

 マシンが突然3000ccに回復することはない。とにかく松山は、現時点で備わっている能力を発揮するしかなかった。そうして、松山のゴルフを見ていると、1500ccという状態の中でも持ちうる技量を出し切って、よく走った(ゲームを作った)ようだった。

「練習日の時点では、(予選落ちするのではないかと思って)4日間できるとは想像していなかったですね。でも片や、『できるんじゃないか』という自分もいましたけど。結局、その中間くらいで終わりました。

 ショットも(多くのホールで)フェアウェーをキープしているけど、悪いショットがたまたまフェアウェーにいったりしていた。"小手先のゴルフ"で、よくここまでやってこられたと思う。

 でも、そういうのではなく、しっかりしたものを出さないと、ここでは勝てないし、上位に行けないと思う。改めて、それがわかったという感じです」

 優勝したのは、パトリック・リード(アメリカ)。4日間、パー5のホールだけで13アンダーをマークした。

 対して松山は、同条件で6アンダー。得意のパー5でバーディーやイーグルがとれないもどかしさと、今の状態によって、19位という結果になったのだと思う。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る