【木村和久連載】夢よ、覚めないで...。
若い美人キャディーさんと妄想

  • 木村和久●文 text by Kimura Kazuhisa
  • 服部元信●イラスト illustration by Hattori Motonobu

 ともあれ、キャディーさんとは初対面でのゴルフですけど、お互いの気持ちを推し量って、こちらはプレーを楽しみ、そのプレーに対してキャディーさんは仕事として自らの業務をこなす。阿吽(あうん)の呼吸――というのですか、そのやりとりがまた、たまらないのです。

 しかし、そんなキャディーさんとの阿吽(あうん)の呼吸ができない同伴メンバーもいます。

 例えば、林の中など、変な方向にボールを打ってしまうヤツです。すると、キャディーさんは小走りで林の中へ行ってしまいますから。そこで、他のメンバーは「キャディーさんに余計な仕事をさせるな」って、打ったヤツをたしなめます。

 ボール探しは、本来キャディーさんの仕事ですけどね。こうやって若いキャディーさんを甘やかすのが、8割方のオヤジなんです。だって、一緒にカートに乗ってお喋りしているだけで、楽しいのですもの。

 一方で「スライスって言ったじゃん」と、グリーン上でキャディーさんに喧嘩を吹っかけるヤツもいます。今回のラウンドでも、「なにぃ~、ピンまでの距離がわからないって。全然使えないなあ」と暴言を吐いたヤツがおりました。

 周りからしてみれば、キャディーさんといい雰囲気でプレーしたいのに、「ぶち壊しやがって」となります。ですから、暴言野郎には「おまえなぁ、こんなに若くて綺麗なキャディーさんがそばにいるだけで十分だろ」と言って諭(さと)します。

 そいつも、もともとは遊び人なので、ふと我に返り、「すみません。距離を聞いた自分が間違いでした」と、すかさず反省。暴言を訂正しました。

 どうです、"若いキャディー無双伝説"。残りの距離すら、聞いてはいけないのですよ。

 まあ、とにかく和気あいあいで、キャディーさんとLINE交換でもしようと、何度かスマホを出しかけました。が、元来照れ屋なもので、第二ボタンの交換だけにしました......って、中学校の卒業式かよ~。

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