もう優勝できないと思った──
イ・ボミが初めて味わう苦悩のシーズン

  • 金明昱●取材・文 text by Kim Myung-Wook
  • photo by Getty Images

 専属キャディーの清水重憲氏も、その点を認める。

「(今季のイ・ボミは)一番得意のショット力が落ちてしまい、それがメンタルに影響していった、というのは確かにありました」

 悩みが増えると、自然と集中力は散漫になる。イ・ボミは、「コースの中を歩いているときも、グリーンに上がったときも、スイングのことばかり考えていました」という。

 今季は「ショットのイメージが出ない」と、賞金女王らしくない弱音を漏らす回数も増えていた。女子ツアー屈指の「ショットメーカー」と言われたイ・ボミから、その"らしさ"はいつしか消え、チャンスをものにできないストレスを今季前半はずっと抱えていた。

 それでも、イ・ボミは浮上のきっかけをうかがっていた。

 感覚を取り戻しつつあったのが、8月のNEC軽井沢72だった。最終日は6バーディー、ノーボギーで回って「66」をマーク。2日目を終えた時点では通算2アンダー、31位タイだったが、最終的には通算8アンダー、7位タイまで急上昇しフィニッシュした。

 そしてその翌週、CAT Ladiesで今季初優勝を手にした。

 長いトンネルからようやく脱出した安堵感もあり、精神的にも楽になったのだろう。さらにその翌週には、韓国ツアーのハイワンリゾート女子オープンに出場。ホールインワンを記録するなどして、通算7アンダー、3位タイという好成績を残した。

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