韓国からの「真の刺客」イ・ミニョンは、
がんに勝った不屈のゴルファー

  • 金明昱●文 text by Kim Myung-Wook
  • photo by Getty Images

 彼女は過去に一度、絶望を味わっている。それによって、ついた通称は「不屈のゴルファー」である。

 その絶望とは、腎臓がんを発症し、現役時代に一度は死を覚悟したことだ。

 遡(さかのぼ)ること2年前。2015年3月に中国で開催された欧州女子ツアーのミッションヒルズ・ワールドレディスチャンピオンシップに出場したイ・ミニョンは、急な腹痛に見舞われた。最初はそれほど気にならなかったが、徐々に気絶しそうなほどの痛みに変わっていった。

 そこで、試合を途中棄権。すぐに韓国に帰国して病院へ向かうと、医師からは「膀胱炎か、それに似た何かの症状だから、心配することはない」と言われたという。だが、あまりの痛さから、彼女は精密検査を希望した。すると、そこで重病であることが発覚。腎臓がんと診断された。

 そのときの心境について、イ・ミニョンは後に韓国メディアにこう語っている。

「がんであることを告げられた瞬間、涙があふれ出ました......。あまりにもショックで、あっけにとられて、怒りも込み上げてきました。家に帰ってからは、両親に『ごめんなさい』と言って、また泣きました」

 手術を受けるまでの10日間、イ・ミニョンは「生と死について、ずっと考えていた」という。ただ一方で、目の前の現実から目をそらすかのように、練習場で必死に球を打ち、ラウンドも精力的にこなした。

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