メンタル改善で今季2勝の鈴木愛。日本人賞金女王へ期待が高まる (6ページ目)

  • 古屋雅章●文 text by Furuya Masaaki
  • photo by Getty Images

 勝負の決め手となったのは、プレーオフ1ホール目だった。上原はバーディー確実という1mにつけていた。一方、鈴木のバーディーパットは6m。決して簡単ではないパットを、鈴木は気合いでねじ込んだ。鈴木が語る。

「正確なことは知らないのですが、あのとき上原さんは初めての優勝争いではないかと思ったんですね。それで(バーディーパットを打つ前に)、私は初優勝してから、どれほど苦しんできたかということを思い出して、そんなに簡単に優勝は渡せないって思ったんです。長い間、めちゃくちゃ苦しんできたから、もうこれ以上は苦しまないぞ、絶対に入れてやる、と思って打ちました」

 それにしても、この中京テレビ・ブリヂストンレディスにおける、鈴木の気持ちの移り変わりを見ているだけでも、実に興味深いものがある。

 試合前は「もう勝てないのでは......」というマイナス思考が先行していた。それが、試合途中の記者の言葉によって、「なにくそ!」という気持ちが燃え上がった。だが、最終日最終ホールで再びピンチを迎えると「またダメなのか......」と意気消沈する。そこで自ら窮地を逃れると、最後は「絶対に優勝を渡さない!」と気迫で勝利をもぎ取ったのである。

 人というのは、たった3日間でここまで成長し、強くなれるのだ。そして、この優勝を機に、鈴木は完全復活を果たし、9月には再び日本女子プロ選手権で優勝、2度目のメジャータイトルを手にした。

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