メンタル改善で今季2勝の鈴木愛。
日本人賞金女王へ期待が高まる

  • 古屋雅章●文 text by Furuya Masaaki
  • photo by Getty Images

 重要な第3打のアプローチ。絶対にやってはいけないのは、ピン手前の傾斜を超えず、ボールが戻ってくることだった。そこでグリーンに乗せることを最優先し、ボギー覚悟でやや強めに打ったボールは、ピンを20mもオーバーした。見た目には、もはやボギーで上がるのも厳しい状況で、鈴木自身、「これは2パットでは無理かな、と思いました」と言う。

「それで、最初のパットは"なんとなく"打ちました。大事なパットだと思いすぎると、変に緊張してすごくショートとかしてしまいそうだったので。だから練習のように、とりあえず見たままの距離と、見たままのラインで打っていきました」

"なんとなく打った"という20mのパットは、カップまで1m強を残して止まった。それを入れれば、プレーオフ。ここまでくると、鈴木の中から悲観的な感情や後ろ向きの思いは消えていた。

「『嫌(な距離)だ』と思ったけど、外す気はしなかったです。パッティングに自信があるわけじゃないんですけど、『練習は誰よりもしている』という自負があるので、その思いだけで打ちました」

 1m強のボギーパットを見事に沈めた鈴木。プレーオフに臨むと、上原とふたりに絞られた2ホール目で難なくバーディーを奪って、約1年8カ月ぶりの優勝を飾った。鈴木にとっては「長かった」という"不調の時期"をついに脱したのだ。

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