苦悩の女王・森田理香子「世間に
イップスと知られるのが怖かった」

  • 金明昱●文 text by Kim Myung-Wook
  • photo by Getty Images

「(ゴルフの調子は)よくなったり、悪くなったりを繰り返していますが、少しずつ成長していると思っています。いいときよりも、悪いときのほうが得るものが多いと思って過ごしています(笑)。人生の先輩たちも、『悪いときのほうが多いし、いいときなんて人生のほんの少しだよ』って言ってくれていますから」

 相当落ち込んでいるのかと思いきや、意外にも森田は冷静で、今の悪い状況もしっかりと受け入れていた。

「つらいことがあっても、優勝すれば、それで忘れちゃいますよね。私にも、かつての輝きがあるから、しんどいことも続けられるんです。もちろん、ゴルフが仕事っていうのもありますけど。ただ、自分の状況が悪くなって、自分の技術や自らの内面とも向き合うことが多くなりました。日々、反省することがすごく多い」

 フーッとひと呼吸置いて、森田が続ける。

「悪くなって一番考えさせられることは、自分自身のことをどう理解しているのかってことです。賞金女王を獲ったときは、自分のことは何も理解していませんでした。例えば、今までは自分にはどういう癖があるのかとか、考えたこともなかったです。普通にやっていれば、スコアは出たし、ドライバーショットが曲がっても『曲がっちゃったなぁ』って思うくらい。スイングの修正はしても、そこまで深く考えることはなかったです。それでもうまくいっていたので......。

 私は今まで、感覚をすごく大事にしてきましたけど、むしろ感覚でしかやってこなかった。理論も何も知らずに、感覚だけでやってきたので、つまずいたときに苦労した。そこで初めて、理論を勉強するようになりました」

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