嵐でも日没でも。72ホール競技にこだわるPGAツアーのプライド

  • 武川玲子●文 text by Reiko Takekawa
  • photo by Getty Images

 とにかくPGAツアーでは、72ホール競技、最低でも54ホール競技成立のために最善の努力をしている。その際、最も大変なのは、大会を運営する裏方たちである。コースコンディションを整えるため、多くのボランティアやスタッフが動員されて、彼らは夜明け前から整備を始める。

 そんな苦労を知っているからだろう。選手たちは、中断や再開が繰り返されても、文句を言わずに黙々とプレーし続けている。

 今回のチューリッヒ・クラシックにおいても、日本の岩田寛(35歳)の、第2ラウンドの開始時間は午後6時だった。そのうえ、日没サスペンデッドとなって、消化したのはわずか5ホール。残りは翌日の早朝となった。

 しかし、こんなことはPGAツアーでは日常茶飯事の出来事。そんなツアーだからこそ、優勝には大きな価値があり、世界のトップ選手が集まってくる“世界一”のツアーなのだと、改めて実感する。

 今回、長丁場の大会をプレーオフで制し、ツアー初優勝を遂げたのは、ブライアン・スチュアード。54ホール競技とはいえ、その過程を考えれば、それ以上の価値があるものかもしれない。最後まで我慢強くプレーを続けた彼の、貴重な勝利を祝福したい。

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