世界中で悲鳴。「スピースの悲劇」に想うマスターズ大崩れの歴史 (3ページ目)

  • 武川玲子●文 text by Takekawa Reiko
  • photo by PGA TOUR

 他にも、マスターズには数々の悲運のドラマがある。1956年は、4打のリードがあった首位ケン・ベンチュリー(アメリカ)が「80」の大叩き。ジャック・バーク(アメリカ)が逆転で勝利を飾った。

 1985年は、首位カーチス・ストレンジ(アメリカ)が4打リードで最終日を迎えながら、13番、15番とふたつのパー5で池ポチャ。勝利を逃した。

 記憶に新しいのは、2011年。初日からトップを快走していたロリー・マキロイ(北アイルランド)が、最終日にまさかの大失速。後続に4打のリードがありながら「80」を叩いて、シャール・シュワーツェル(南アフリカ)に栄冠を譲ってしまった。

 かつてのドラマが頭をよぎる中、今年も夕日が沈みかけ、オレンジ色に輝く18番グリーンで表彰式が行なわれた。

優勝したダニー・ウィレット(左)にグリーンジャケットを着せるジョーダン・スピース(右)優勝したダニー・ウィレット(左)にグリーンジャケットを着せるジョーダン・スピース(右) 無念の敗北を喫したスピースは終始うつむいていた。それでも、ディフェンディングチャンピオンとして、優勝したダニー・ウィレットにグリーンジャケットを着せる役目を立派に果たした。

「運命の女神はダニーを選んだ。そして、ダニーの勝利は素晴らしかった。だけど、あんなにつらい表彰式を経験した選手は、きっと他にはいないと思う。この負けから立ち直るには、しばらく時間が必要だ」

 涙をこらえながら、そう言ってコースを立ち去ったスピース。6月には、再び連覇がかかる今季メジャー第2弾の全米オープン(6月16日~19日/ペンシルベニア州)が待ち受けている。この経験を生かすも殺すも、彼次第である。

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