苦悩する渡邉彩香を日本人最上位に導いた、樋口久子の「助言」

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

「球がストレートになっているのに、フェードの球を打っていたときと同じ構えをしている。狙い目が左過ぎる。球がストレートになったのだから、真っ直ぐ狙って、真っ直ぐ構えないとダメよ」

 渡邉は、そう言われてハッとしたという。

「私は、真っ直ぐ構えているつもりだったんですが、ずっとフェードで打っていたので、その癖が残ってしまっていたんでしょう。左にボールが行くミスが多くて悩んでいたんですが、左を向いていることにはまったく気づいていませんでした。そのことを、樋口さんはすぐに指摘してくれた。それで、その日は一日、樋口さんがずっと私のショットを見てくれました。『ちょっと右』『もう少し右を向いて』といった具合に、事細かくアドバイスをしていただいたんです。

 そして最後に、『スイング、すごくよくなったわね』と言ってくださった。そのひと言で、これまでモヤモヤしていた不安が一瞬にして消えて、『オフにやってきたことは正しかったんだな』と、はっきりと思えたんです。それからは、試合でも納得できるショットが打てるようになって、いい球が行くようになりました。結果も出て(10位タイ)、また自信が戻ってきましたね」

 目の前の視界が一気に広がった渡邉は、次戦のヤマハレディースで優勝。樋口プロの助言によって、完全にスランプから脱した。それからは自慢の飛距離を武器にして、何度となく優勝争いを演じ、秋には、樋口久子 Pontaレディスで圧倒的な強さを見せて、シーズン2勝目を挙げた。

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