賞金女王イ・ボミが「ゴルフはもうやめる」と言って涙した日 (6ページ目)

  • 金明昱●文 text by Kim Myung-Wook
  • photo by Getty Images

 しかし母ファジャさんは、今となっては「特に苦労した記憶はない」と、当時のことを笑顔で振り返る。

「カルビ店を経営していたときには、お店の周辺に軍隊の駐屯所があったんですね。それで、若い兵隊さんたちがよく店に来てくれて、すごく繁盛していたんですよ」

 ファジャさんはそう言って笑うと、イ・ボミについて、こんなエピソードを教えてくれた。

「ある地方のゴルフ大会で、ボミはあまりいい結果を残せなくて、大泣きして帰ってきたんですね。そのとき、私は『ボミは勉強ができるんだから、これからはゴルフをやめて、勉強に専念すれば』と言ったんです。そうしたら、ボミも『うん、じゃあゴルフはもうやめる……』と答えたんですよ。

 その後、練習もしていないようでしたから、本当にやめるんだな、と思っていたら、3日くらい経ってからですかね、ボミが私のところにやって来て、こう言うんです。『今までの、私にゴルフをさせるためにかかったお金がもったいないから、やっぱりやめられない。最後まで一生懸命がんばって、これまでかかったお金を自分で持ってくる』と」

 そのとき母は、「それなら最後までがんばりなさい」と、そっと娘を抱き寄せたという。

 両親から、絶大なる愛情を注がれてきたイ・ボミ。それこそ、日本で成功を収めることができたひとつの要因であり、彼女の強さの秘密なのだろう。

(つづく)第2回はこちら>

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