日本女子ツアーを制圧。「強い」イ・ボミは、こうして生まれた (5ページ目)

  • 古屋雅章●文 text by Furuya Masaaki
  • photo by Getty Images

 昨年に比べて、ティーショットとパッティングが格段に進歩し、ルーティーンを確立してメンタル面の安定も図ったイ・ボミ。最終戦の前までに年間7勝を飾って、ついに悲願の賞金女王の座も手にした。

 それでも、長いシーズンである。精神的に息詰まってしまったときもあったという。清水キャディーが振り返る。

「ようやく今季の1勝目を挙げた、ほけんの窓口レディース(5月15日~17日/福岡県)の翌週と、54位タイと振るわなかった終盤戦のTOTOジャパンクラシック(11月6日~8日/三重県)の翌週は、めずらしく『ちょっとゴルフから離れたい』と言って、普段は火曜日に会場入りするのに、水曜日にずらしたことがありました。イ・ボミプロの場合、目標の設定が高く、そのストイックさが自分を追い詰めて、疲れてしまうことがあるんです」

 そんなとき、清水キャディーは、ゴルフともっと楽に向き合えるような話をしていたそうだ。

 例えば、イ・ボミはどんな試合でも「66」や「67」といったハイスコアを目指しているほど、自分に求めるものが相当高いという。だが、いくらプロでも毎回そんなスコアを出せるわけがない。そこで、清水キャディーは、イ・ボミにこんな話をしていた。

「毎年、平均ストローク1位の選手は、よくても“70.1”あたりの数字。だから、毎試合『1ラウンドで2アンダー、“70”で回ればトップに立てるんだよ』と説明するんです。また同様に、僕が強い選手の条件として重視しているのがパーセーブ率(パー以上で回る確率)なんですが、トップ選手で90%弱。とすれば、『18ホール中、2個くらいボギーを打っても許容範囲なんだよ』という話をしたりしましたね」

5 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る