再び1打差に泣くも、松山英樹が示した「一流の証」 (2ページ目)

  • 武川玲子●協力 cooperation by Takekawa Reiko text by Sportiva
  • photo by Getty Images

 圧巻だったのは、3日目だ。「63」(パー71)の好スコアを出して、通算10アンダー、トップと3打差の2位タイに浮上した。

「スコアはここまで伸ばせると思っていなかった。パッティングに関してはすごくいい感じで打てていて、ミスも本当に数回だった。集中力を高めた? 集中力というのとは、ちょっと違う。これまでも集中してプレイしていましたから。ただ、ショットは昨日に比べたら、迷いなく振れていた。(自分のショットを)100%信じて打てていたか、というと微妙ですけど、ミスをしても許せるような、程よい感じで打てていた。『ミスになっても仕方がないな』っていう感じで。そう思って打っていたのが、大きなミスにならなくて、それがよかったのかな、と思います」

 最終日は、1番パー4で2打目を直接カップイン。いきなりイーグル発進という好スタートを切ると、3番、5番でバーディーを奪って早々にトップに並んだ。そして後半、13番パー5できっちりバーディーを決めて、ついに単独トップに立った。だが、続く14番で12mのバーディーパットが打ち切れずに2mもショート。そのパーパットを外して後退した。結果的にはこの一打が響いた。

「14番のパットが悔やまれる? う~ん、それも痛かったですけど、15番(パー5)のティーショットでミスしたのもすごく痛かった(右のラフに打ち込んで2オンを狙えずレイアップ)。思い返せば、すべてのホールで悔いがある。いいショットも、いいパットも、後半は1回もなかった。結局、昨日までよかったショットが悪くなるというのは、まだ自分に自信がないのかな、と思います。それでも、こういう(優勝争いをした)ときにしかわからないことがたくさんある。そこで、課題も出てくるし、こういう経験をしていくことは大事。一打の大きさも知る」

 ヒュンダイトーナメントでプレーオフ進出を逃した際、松山はその悔しさを引きずってか、メディアの前に現れるまでかなりの時間を要した。取材を受けても、発する言葉数は少なかった。それが今回は、ラウンド終了後、すぐにさばさばした表情を見せて、メディアの囲み取材にも淡々と対応。気持ちはすでに次戦に向いていた。そこには、この数週間の間にも、急速に成長している松山の姿があった。

「今は、変に(たくさん)練習して、(自らの課題に対して)突き詰めてはいない。それは、自分自身でちょっと物足りない感じはする。でも、練習をやり過ぎると、昨季みたいにイライラしてきて、もっともっと練習したくなって、止まらなくなってしまう。そういう意味では、今が程よい感じなのかもしれない。ツアーを戦っていくうえでは、休むということがすごく大事だな、と思いますし。今はミスに関しても許せている。この試合でも何回かミスをしたけれども、昨年に比べたら、比べ物にならないほどミスは減っている。その分、それは仕方がないこと、として受け入れられている。それに、きちんと打てたとき、その打てたショットに関して、しっかりと自分の中で吸収し、消化できているからいいんだと思います」

 最終日、「変に緊張することなく、いい感覚でスタートすることができた」という松山。そうしたスタンスを今後も維持できれば、米ツアー2勝目はまもなく訪れるだろう。それにしても驚くべきは、日本のメディアやファンを含めて、松山が優勝争いに加わっていることが"当たり前"になっていること。それこそ、松山の"すごさ"であり、今季の大いなる飛躍を予感させる。

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