【ゴルフ】イ・ボミ「私が笑顔と賞金女王にこだわる理由」 (2ページ目)

  • 金明昱●文 text by Kim Myung-Wook
  • 小内慎司●撮影 photo by Kouchi Shinji

 イ・ボミのショックは計り知れない。後半戦でなかなか結果を出せなかったのは、父親を亡くした影響が少なからずあったはずだ。しかしツアー中、彼女はそうした悲しみを表に出さず、他界した父親についてメディアの前で話すこともなかった。黙々と目の前の戦いに集中していた。

 シーズンが終わって、亡くなった父親のことを改めて聞くと、イ・ボミは遠くに視線を送りながらこう語った。

「(病に伏せていた)父は、私の顔を見ると『賞金女王を目標にしてきたからには、ぜひ達成してほしい』と、ずっと言っていました。その言葉がなかったら、はたして(前半戦で)3勝もできただろうか、と思っています。というのも、私が優勝した姿を見れば、父が元気になるんじゃないか、という一心で戦っていましたから」

 イ・ボミが涙をこらえながら続ける。

「父がこの世を去ったあとも、自分なりに一生懸命、プレイしてきたつもりです。それでも、やっぱり(ゴルフに)集中できなくて、思うような結果を残せませんでした。父のために、何としても賞金女王を獲らなければいけない、と思っていたんですが......」

 父親が亡くなったあとのイ・ボミについて、専属コーチの趙範洙(チョ・ボムス)氏はこう語った。

「(父親がなくなって)かなり落ち込んでいましたし、精神的にも参っていました。体重も結構落ちていましたからね。でも彼女は、日々トレーニングを続けた。スイングの修正を指示すれば、それに応えて、一生懸命プレイしてくれたと思います」

 本来であれば、精神的にも、肉体的にも、ゴルフをやれるような状況ではなかったという。しかしイ・ボミは、亡き父のため、応援してくれるファンのために、トーナメントに参加。コース内では気丈に振舞って、常に笑顔でファンの声援に応えていた。イ・ボミが語る。

「辛くても、しんどくても、いつも笑顔でいることが、ファンへの、私なりの感謝の気持ちの表し方なんです。結果はともかく、2014年も最後まで、そのスタイルでプレイを続けられたということは、自分なりに努力して、精一杯がんばれた一年だったのかな、と思っています」

 すべてはファンのために――悲痛な思いを抱えながらも、笑顔を絶やさなかったイ・ボミ。このスタンスこそが、多くのファンの心をつかみ、それが「スマイル・キャンディ」と呼ばれるゆえんなのだろう。

 そこで、イ・ボミにこんな質問をしてみた。

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