【ゴルフ】菊地絵理香の告白「私、時間がかかるタイプなんです」

  • 古屋雅章●文 text by Furuya Masaaki
  • 小内慎司●撮影 photo by Kouchi Shinji

「昨年の日本女子オープンと、今年の富士通レディースは、完全に自滅です。『優勝』を意識してのもの、ですね。『勝てるかも......』と思った瞬間に(体が)硬くなってしまって、『パーで上がればいい』と思った途端、パーを取るのが難しくなってしまった。あの2試合で、『目の前の一打(に集中する)』っていうことが、どういうことなのかわかりました。それが、勝つために必要なことも。でも(大事な場面で)何も考えずに"目の前の一打"を打つこと、そういう本当にシンプルなことに集中するのは、とても難しいことですね」

 北海道苫小牧市出身の菊地は、ゴルフのティーチングプロである父・克弥さんの影響で6歳の頃、ゴルフを始めた。本格的に取り組み始めたのは、中学生のとき。ティーチングプロの克弥さんならではの発案による、自宅の転居がきっかけだった。克弥さんが説明する。

「子どもというのは、練習場で必要以上に球を打ちます。そうして、打った球を見ては、スイングをあれこれといじるんですが、それでは上達しません。ある程度のスイングの形ができたら、コースでそれを試して、うまくいかないことがあったら、それを練習場で修正する。この繰り返しで、うまくなるんです。だから私は、娘が中学生になったときには、毎日コースに出そうと考えていました。しかし自宅近辺のゴルフ場は高くて、とても子どもにはプレイをさせられない。そこで、隣の市にある9ホールのゴルフ場の支配人に話をつけて、子どもが球拾いや掃除をしたあと、バッグを担いでコースを回らせてもらえるようにしてもらった。となれば、子どもが通えるようにしなければいけないので、家を売ってゴルフ場の近くに引っ越したんです」

 最近は、日本の女子ゴルフ界でも、子どものためになると思ったら、そのために尽力する親が増えてきた。克弥さんも、そのタイプだった。

 そんな父親のおかげで恵まれた環境を得た菊地はメキメキと上達し、中学校を卒業すると、高校はゴルフの強豪・東北高校(宮城県)に進学した。宮里藍(29歳)とは入れ違いだったが、1学年上には有村智恵(26歳)、原江里菜(27歳)らが在籍。実力者の中でもまれて、さらに力をつけていった。最終学年になったときには、東北ジュニアで優勝。全国高校選手権では、個人と団体でタイトルを手にした。

 高校卒業後は、早々にプロでも活躍すると思われたが、最近の若手選手と比べて、菊地は意外にも苦労を重ねている。プロテストは2008年、2度目の挑戦で合格した。プロ入り後もなかなか結果を残せなかった。賞金ランク43位となって、初のシード権を獲得したのは、プロになってから4年後の2012年だった。

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