【ゴルフ】飛躍・鈴木愛には「一家の生活がかかっていた」 (2ページ目)

  • 古屋雅章●文 text by Furuya Masaaki
  • 小内慎司●撮影 photo by Kouchi Shinji

 さらに、春先から取り組んでいるフェードボールによって、ショットの安定感が増した。鈴木が語る。

「ドローボールでも、技術があればツアーで戦っていくことはできると思うんですけど、やはりフェードボールのほうが(グリーンに)止まりやすいし、曲がり幅も少ない。それで、スコアを安定させるためにはフェードなのかなと思って、(この春から)思い切って持ち球を変えました」

 おかげで、メジャー設定の高速グリーンにも対応。今では状況によってフェードとドローを打ち分けられるようになって、攻め方の幅が一層広がったという。

 メンタル面の成長も、大きな要素だ。「宮里藍が目標」と報じられている鈴木だが、実はもうひとり、彼女が目標とする選手がいる。女子プロ選手権でも優勝を争った申ジエである。

「スイングとか、攻めのゴルフスタイルとか、すごく見習うところが多い。そして何より、いつも笑ってプレイしているじゃないですか。悪い結果になっても、なんであそこまでニコニコしていられるんだろうって、(申ジエのことは)いつも見て、参考にしています」

 そうやって、申ジエのスタイルを見習ってきた効果が、今季途中から徐々に出てきたという。

「今までは、完璧を求め過ぎて、ちょっとしたミスでイラッとして、そこからリズムが悪くなったり、ミスを重ねたりしていました。でも最近は、ミスをしても『まあ、そのうちいいこともあるだろう』って思えるようになったり、笑顔でいられたりすることが増えました。"笑える"のは、それだけ余裕があること。それぐらいじゃないといい成績は出せないと思って、できるだけ笑ってラウンドするように心掛けています」

 女子プロ選手権優勝は、そんなメンタル面、気持ちのコントロールがうまく生きた結果だった。

 最終日の終盤、2位に2打差をつけてトップに立った鈴木だったが、勝負どころの16番でボギーを叩いてしまった。ツアー優勝の経験もなく、プロになったばかりの選手とすれば、そこからズルズルと後退してもおかしくなかった。だがそのとき、鈴木はキャディーと笑顔で会話をかわしていたのだ。

「(そのことは)覚えていないんです。でも、まだ(2位と)一打差あったので、17番でパーをとれたら『大丈夫』って思っていました」

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