【ゴルフ】崖っぷちの諸見里しのぶ「1円でも稼ぎたい」 (3ページ目)

  • 金明昱●文 text by Kim Myung-Wook
  • 小内慎司●撮影 photo by Kouchi Shinji

 今季は開幕からほぼひとりでトレーニングに励んできたが、8月のニトリレディス(8月29日~31日/北海道)からは中島敏雅コーチ(ゴルフアカデミー中島)にスイングなどを見てもらうようになった。あらゆる面において、基礎から取り組み直しているという。

「(中島コーチから)少しずつアドバイスをもらいながら、自分の中での手応えやいい感触、プレイすることの気持ちよさなどを実感することができています。スイングも、以前のものと見比べながら修正して、よかったときのイメージに戻ってきました。ボールが(高く)上がるようになってきたし、しっかりと止まり始めている。距離感も合ってきましたし、いいこと尽くしです。

 最近はバーディーチャンスをたくさん作れるようになってきたので、あとはそれを決め切って、スコアを伸ばしていくだけ。今は、流れを作り出すことができていないな、と思うことが多いのですが、そういうときに“悔しさ”を感じることが増えてきたんです。諦めたり、投げやりになったりしないで、そういう気持ちが戻ってきたのは、本当に何年ぶりだろう……。やっと、ここまで戻ってこられた、という感じです」

 今や自分のことを冷静に見つめることができている諸見里。もちろん、シード権獲得は最後まで諦めていないものの、もしもシードを喪失したときのことも、受け入れる準備はできている。

「試合がある限り、攻めの姿勢は崩したくありません。賞金シードを獲るために、1円でも(多く)稼ぎたいと思っています。でも、もし(シードを)失ったら、実際にどうするのか? 自分は、クォリファイングトーナメント(QT※)でツアーの出場権を勝ち獲るつもりでいます」

※クォリファイングトーナメント。ファースト、セカンド、サード、ファイナルという順に行なわれる、ツアーの出場資格を得るためのトーナメント。ファイナルQTで40位前後の成績を収めれば、翌年ツアーの大半は出場できる。

 栄光の舞台に立っていた諸見里は、まさかの転落人生を味わった。その苦悩は計り知れないが、彼女は改めて“原点”に戻ろうとしている。それも、無理にではなく、あくまでも自然体で。

 プロゴルファー・諸見里しのぶの「第2幕」が、これから始まる。

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