【ゴルフ】宮里藍の生命線を奪った「嫌な感触」

  • 武川玲子●文 text by Takekawa Reiko
  • photo by Getty Images

 宮里が今季、ずっと不振にあえいでいた最大の要因は、本人が語るとおりパッティングの不調にある。彼女のゴルフにとっては、"要"となるものだ。決してロングヒッターではない宮里が、米ツアーで世界の強豪相手に互角以上に渡り合えたのは、正確なショットとショートゲーム、そして勝負どころできっちり決められるパッティングがあったからに他ならない。その"生命線"に支障をきたしては、さすがの宮里も好結果は望めない。

 パッティングに狂いが生じたのは、ちょうど1年前。昨秋、日本ツアーに参戦したときだった。その際、7年ぶりにパターを変えると「(パッティングの)フィーリングが変わってしまった」。それが、原因だった。すぐにもとのパターに戻したものの、そのときに染みついた「(パターを)押し出す、嫌な感触」が、いつまでも手に残ってしまった。

 その感触を払拭(ふっしょく)し、元のフィーリングを取り戻すことが、今季最大の課題だった。

 以前、ドライバーの不調からスランプに陥った宮里。その経験から彼女は、「ドライバーのときと同じように、今回も時間がかかると思う」と語ったが、はたから見ている者としては、ドライバーのほうが修正は困難で、パッティングの調子はすぐに戻るだろうと楽観視していた。しかし、その考えは誤っていた。

「練習グリーンでは問題ない。プレッシャーのかかったときだけ、(いいフィーリングで)打てなくなってしまう。だから、実戦で試したいんです」

 宮里はそう言って、体調が思わしくない中でもシーズン序盤から試合に出続けたが、一向に調子が上がる気配はなかった。パットが決まらず、上位に顔を出すことはほとんどなかった。全米女子オープン(6月19日~22日/ノースカロライナ州)までの前半戦は、米ツアー12試合に出場し、最高位は3月のキア・クラシック(3月27日~30日/カリフォルニア州)の24位だった。

 コーチを務める父・優さんからもアドバイスを受けて、「テイクバックを少し小さくして、トップからスピードを加速していくこと」など、シーズン中でも技術的な修正をずっと繰り返していた。普段は「量より質」という練習スタンスをとっていたが、一時は「このストロークを、体がしっかりと覚えるまでやろう」と、通常の2倍近い時間を費やして練習に没頭することもあった。

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