【ゴルフ】遅咲きの吉田弓美子が秘める「こだわり」

  • 金明昱●文 text by Kim Myung-Wook
  • photo by Getty Images

「マンデートーナメント(※)に出場しても、ほとんど突破できず、もどかしい日々を過ごしていました。特にこの時期、同世代の選手がすごく活躍していたんです。ナショナルチームで一緒だった諸見里しのぶさん(2007年に日本女子オープン優勝。2009年にはツアー6勝)に、有村智恵さん(2008年にツアー初優勝を飾ると、2009年にはツアー5勝)、そして原江里菜さん(2008年にツアー初優勝を飾って賞金ランク10位)らが活躍する姿を遠目で見ていて、余計に歯がゆかったですね。雲の上の存在と見ていた人たちが、さらに天の上のほうまで登っていってしまったようで、『もう追いつけないだろうな』と思ったりして......。そのときの、もがき苦しんでいた時間は、本当に長く感じました」

※トーナメントの出場資格がない選手が出場権をかけて争う予選会。トーナメント開催週の月曜日に行なわれることが多い。出場権が得られる人数は大会によって異なる。

 しかし吉田は、その3年間を乗り越えたことでたくましくなったのだろう。2009年のプロテストでトップ合格を果たすと、同年のQTで初めてファイナルまで進出(12位)。翌2010年シーズン、念願のツアーフル参戦を果たした。そして、2011年シーズンに初のシード権を獲得、それからシード選手の常連となった。

 そんな吉田には、こだわりがある。できる限り、試合に出ることだ。

「自分は今、こうしてレギュラーツアーに出られるような選手になりました。だからこそ、出られる試合はすべて出場したい。そして、一試合、一試合を大事にしていきたいな、と思っています。もちろん、うまくいかない時期は(試合に)出たくないな、って思うこともあります。でも、試合に出られなくて、もどかしい日々を送っている人たちのつらさに比べれば、なんてことはない。そのつらさを私も知っているので、今の私はとても幸せな立場にあると思っています。ですから、試合に出られるうちは試合に出続けたい。そして、チャンスをつかみたいんです」

 実際に吉田は、2012年シーズンは35試合中、34試合に出場(うち1試合途中棄権)。2013年シーズンも36試合中、35試合に出場(うち1試合途中棄権)している。長い間、試合に出たくても出られなかった吉田にとって、試合に出られること、それこそが最大の喜びなのである。ゆえに、どんな試合も無駄にしないように全力を尽くす。ファンに対しても、笑顔を絶やさない。そうした謙虚な姿勢が、近年の好成績につながっているのかもしれない。

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