メジャー制覇も確信。初優勝で示した松山英樹の「強運」

  • 武川玲子●協力cooperation by Takekawa Reiko
  • photo by Getty Images

 松山の圧巻のプレイには、同組でプレイしたアダム・スコットや、大会のホストを務める帝王ジャック・ニクラウス(アメリカ)も手放しで称えた。

「ヒデキの18番のプレイを見られて、今日はとてもハッピーだった。あのセカンドショットで試合に勝つチャンスができたんだからね。昨年の10月に(プレジデンツカップで)一緒にプレイしたときから、ヒデキは素晴らしい選手だった。世界でもベストプレイヤーに挙げられるひとりだよ。今回の勝利で、大きな自信がつくだろうし、ますますうまくなっていくと思う」(アダム・スコット)

「マツヤマは、これから10年、15年と、長い間活躍する選手になる。何より、彼のスイングのテンポが素晴らしい。そして、すごく落ち着いている。16番で池に入れたときも、まったく動じていなかった。パッティングのストロークも非常にスムーズだ。それが、22歳でできているのが素晴らしい」(ジャック・ニクラウス)

 また、ゴルフジャーナリストの三田村昌鳳氏は、松山にとって今回の勝利は「いろいろな意味で大きな価値がある」と語る。そのうえで、2週間後に迫った今季メジャー第2弾の全米オープン(6月12日~15日/ノースカロライナ州)への期待も膨らむという。

「松山はもともと米ツアーでも勝てるポテンシャルを持っていたけれども、ゴルフ以外のこと、例えば移動とか宿泊とか、そうした米ツアーで戦う環境(『チーム松山』のチームワークも含めて)に慣れてきたことが、今回の優勝につながったと思う。また、今回は周りが崩れてチャンスが回ってきたことに、彼の“運”の強さを感じる。というのも、もし今回勝てていなかったら、いろいろな重圧とか、煩(わずら)わしさというものが増して、優勝という“壁”がさらに厚くなっていたと思うからだ。勝てる力があっても、なかなか結果が出ないと精神的に参ってしまう。すでに何度かチャンスを逃してきた松山は、そうした領域に入りそうな気配があった。しかし、まさにちょうどいい時期、優勝への壁が強固になる直前に、松山はその壁を打ち破った。その価値は大きいし、松山の“強運”を感じる。

 そういう意味では、これからがますます楽しみ。1勝したことによって、今後2年間の米ツアーのシード権が保障されるなど現実的な特典と同時に、精神的な特典というものも増えるからだ。自分のペースで試合に臨むことができるし、あらゆるトーナメントにおいても、より思い切ったプレイができる。もちろんメジャー、近いところで言えば全米オープンにおいても、試合への入り方、気持ちの持ち方がこれまでとはまったく違ってくる。メジャーとなれば、当然セッティングは非常に厳しくなるけれども、精神的な部分でさらなるプラスアルファーを得た今の松山なら、十分にチャンスはあると思う。今回も、結果的には世界ランキング上位者と争って勝っているわけだから、ここで得た“自信”は本当に大きいと思う」

 見事、米ツアーで結果を出した松山。日本人初のメジャー制覇を成し遂げる日も、そう遠くはないかもしれない。

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