【ゴルフ】2013年、松山英樹。世界を震撼させた「5つのスキル」 (2ページ目)

  • 三田村昌鳳●文 text by Mitamura Shoho
  • photo by Getty Images

 ひとつは、全米オープン、全英オープンという、タイプの違うメジャー大会で結果を出したこと

 というのも、深いラフに高速グリーンなど、緻密なセッティングで難コースを作り上げる全米オープンと、強風が吹き荒れ、自然を生かしたリンクスで行なわれる全英オープンとでは、コース設定がまったく異なり、求められる技術も違うからだ。そのため、世界のトッププレイヤーでも、両方のコースで好成績を残せる選手は数少ない。どちらかが得意で、どちらかが苦手というタイプに分かれている。

 初出場初優勝(1975年)を飾って以来、通算5勝と全英オープンでは無類の強さを誇ったトム・ワトソンでさえ、最初はリンクスコースが嫌いだったという。米ツアーで培ってきた高い球がまったく通用しなかったからだ。

 しかし松山は、高弾道でピタリとボールを止められるショットが要求される全米オープンで結果を出したあと、ほぼ真逆の、転がしや低い球が求められる全英オープンでも、上位争いを演じた。タイプの異なるコースに難なく順応してしまった松山に、世界中が驚愕し、世界的に見てもトップクラスの選手であると認められた。

 終盤を迎えてからのギアチェンジのうまさ、という点も、世界が松山を認めた要因のひとつだ。

 4日間、計72ホールを戦う中で、最終日の残り18ホールというのは、マラソンで言えば、終盤で迎える"ハートブレイクヒル(心臓破りの丘)"であって、さらに「サンデーバックナイン」と言われる最後の9ホールは、体力的にも、精神的にも、最もつらい状況となる。メジャー大会となれば、その過酷さは一層増して、これまでの日本人選手というのは、それまで上位争いをしていても、最終日には息切れしてしまうことが多かった。ところが、松山はそこで持ち堪えることができた。体力があるのはもちろんのこと、松山は終盤になってからも、自分の気持ちのギアを切り替えることができ、そこから改めて攻めていけるのだ。

 例えば、あまりいいスコアが出せない状況にあっても、松山は変に守りに入ったり、無謀な攻めを仕掛けたりしない。うまく気持ちを切り替えながら、その場、その場の状況に応じてベストな選択をし、攻めていくことができる。ゆえに、最終日、それも終盤を迎えても、ズルズル後退することなく、スコアを伸ばしていける。全米オープン最終日の快進撃や、全英オープンで最後まで上位争いから脱落しなかったのが、その証明だろう。

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