【ゴルフ】外国人記者が綴る「松山英樹は『お山の大将』ではない」

  • アンドリュー・ボス●文 text by Andrew Both 武川玲子●翻訳 translation by Takekawa Reiko
  • photo by Getty Images

 前述した石川も、決してチャンスがないわけではない。飛距離も十分に持っている。ただ、あの小さな体格で、外国人プレイヤーと対抗するだけの距離を飛ばすには、ティーグラウンドで靴が脱げてしまうのではないか、と思わせるほどクラブを振り回さなければならない。そこには、どうしても無理が感じられてしまう。

 そこで、期待が持てるのが、松山である。松山は、石川よりもはるかにパワフルな体格を持ち合わせている。そして、その力をフル回転させることなく、外国人プレイヤーと遜色ない飛距離を飛ばすことができる。

 そのうえ、松山のスイングは、バックスイングからダウンスイングに切り替わるトップの位置で、一瞬クラブが止まっているかのように見えて、非常に安定感がある。持ち球であるフェードの球筋は、安定した軌道を描き、トラブルになることが少ない。

 技術面に限らず、松山は精神的にもたくましい。感情のバランスを一定に保つことができて、ミスショットのあともまったく動じない。それはまるで、座禅を組む日本人のように、静かで落ち着いているように見える。

 だからこそ、松山は限られた試合数しか出場できなかった今季の米ツアーでも、堂々のプレイを披露。たった7試合で来季の米ツアーシード権を獲得した。

 なかでも、メジャー大会での戦いぶりは素晴らしかった。6月の全米オープンで10位、7月の全英オープンでは6位と、それぞれ初出場ながら、好成績を収めた。際立っていたのは、全英オープンだ。第3ラウンドでスロープレイにより1ペナルティーを受けた。それによる精神的なダメージを考えると、あのペナルティーがなければ、いったいどれほどの順位だったのだろうか、と思ってしまうほど、大きな可能性を感じた。同時に、そうした試練を難なく乗り越えて、最後まで優勝争いを演じた松山の精神力には感服させられた。

 その後、松山は8月の全米プロ選手権でも19位でフィニッシュ。今季出場したメジャー大会すべてで予選通過を果たした。8月初旬のブリヂストン招待で、同組でラウンドしたタイガー・ウッズも、松山について「彼は満載の才能にあふれている」と称した。

 レギュラーシーズンの最終戦となるウィンダム選手権では、ベストなプレイができなかったことを悔やみながらも、15位に入った松山。世界ランキングは、(まだそこまでの実力があるとは思えないが)28位にまで上昇した。一方、石川は世界ランキング151位まで後退。ふたりの注目度やランキングは、株価市場の上昇・下落銘柄を示す変動グラフのように、上下まったく逆方向に向かっている。

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