【ゴルフ】メジャー制覇はならずも、高まる松山英樹への期待 (2ページ目)

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • 小内慎司●撮影 photo by Kouchi Shinji

 ところが、シーズンが開幕すると、安定感を欠いたのはショットだった。とりわけ、ドライバーが左右に大きく曲がっていった。第2戦、つるやオープンでプロ初勝利を手にしたものの、ショットの調子は相変わらず。第3戦の中日クラウンズ、そして日本プロ選手権も同様だった。ティーショットでドライバーを握らない苦肉の策と、逆に心配していたパットが好調で優勝争いに加わってきたが、メジャーという大舞台の土壇場で不安視していた課題が露呈した。

「コースマネジメントで選択肢が増えたことが、日本プロの収穫でした。ティーショットで距離を稼げない分、今後はもっとショートゲームを磨いていきたい」

 それにしても、開幕戦の10位タイに始まり、優勝、2位、2位という好成績は目を見張るものがある。国内賞金ランキングは、4994万6000円でダントツのトップだ。

 進藤キャディーは言う。
「これだけ好結果を残せているのは、松山の高い志、それしかない。ダボ(ダブルボギー)やトリプル(ボギー)を打っても、日本プロ2日目のように2打罰があっても、常に前を向いていく。自分も、松山がプラスに考えられるような声のかけ方をしているんですけど、今日(日本プロ最終日)は声をかけてもなかなか返ってくるものがなかったですね。それがメジャータイトルのプレッシャーなのかもしれません」

 また、東北福祉大の阿部靖彦監督は、松山の安定した成績をいわば「鈍感力」にあると話した。
「普段はどこにでもいるような21歳だし、性格もマイペース。新幹線で財布を忘れるし、相変わらず寝坊も多い。そういう"鈍感力"のようなものの反動で、ティーグラウンドに立てば、勝利をひたすら目指すプロゴルファーの顔になる。入学時からプロを見据えて、4日間戦える身体を作ってきた。その成果がうまい形で出た序盤戦だと思います」

 国内メジャー第1弾の日本プロ選手権は涙するも、第2弾となる日本ツアー選手権は6月(20~23日)に控えている。さらに、5月27日には全米オープンのアジア地区最終予選に出場し、すでに出場権を獲得している全英オープン、現在の世界ランキング(92位。5月13日現在)を維持すれば出場権取得も見えてくる(例年、世界ランキング100位以内の選手は招待されている)全米プロと合わせて、海外メジャーという大きな舞台が松山には待っている。今回の日本プロ選手権での経験が、間違いなくそこで生かされるはずだ。

 開幕前には、「(ライバルの石川)遼に追いついたと思える日が来るとしたら、それは海外メジャーを先に勝てたとき」と語っていた松山。ごく近い将来、それさえも成しえてしまうのではないか。そんな淡い期待を抱いてしまう序盤戦の快進撃である。

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