未来のマスターズ優勝へ。ようやくスタートラインに立った石川遼 (2ページ目)

  • 三田村昌鳳●文 text by Mitamura Shoho
  • photo by Getty Images

 その流れのまま突入したプレーオフ。1ホール目はともにパー。2ホール目はふたりともバーディーチャンスにつけた。最初に打ったのは、カブレラ。ピン手前8mから打ったボールは、カップの右縁に止まってしまった。

 一方、ピン横7mにつけたスコット。慎重に打ったボールは、カップの真ん中に飛び込んでいった。スコットが、オーストラリア選手初のマスターズ勝者となった。かつて、オーストラリアの先輩グレッグ・ノーマンは、幾度となく優勝争いを演じながら未勝利に終わった。その鬱憤を晴らすかのような、見事な勝利だった。

 注目のタイガー・ウッズは、5アンダー4位タイに終わった。

 不運だったのは、2日目に起きた事件だった。15番ホール、タイガーが放った第3打のアプローチがピンに直接当たって横に跳ね、池に入ってしまった。問題は、そのあとに打ち直したドロップの位置だった。ラウンド終了後、タイガー自身が「2ヤード下がって......」とコメントしたため、ルールに抵触するとテレビの視聴者の訴えが続出して物議をかもした。
(この場合、元の位置からの打ち直しを選択したタイガーは、第3打と同じ場所から打たなければいけなかった)

 結果的には、2ペナルティーを加算するという裁定が下されたが、それまでの勢いがそがれたことは否めない。結局、3日目にふたつ、最終日もふたつしかスコアを伸ばせず、4位タイにとどまった。「たら、れば」は禁物だが、もし無罰だったならば、プレーオフ、あるいは大逆転の優勝もあったかもしれない。そう思わせるほど、今年のタイガーは円熟期を迎えていた。

 さて、予選ラウンドでもこの1年間の成長ぶりを随所に見せていた石川遼。それが数字として表れたのが、最終日だった。4アンダーの68と、マスターズで初の60台を記録。ギリギリの予選通過から38位タイに浮上し、5度目のマスターズを終えた。ラウンド後、石川は充実した表情を浮かべて語った。

「優勝争いしている選手が4アンダーで回るのと、僕(の順位)が4アンダーで回るのとでは全然違うと思いますけど、このスコアを出せたことは良かった。それでも、ただ満足することなく、このあとの優勝争いも(テレビで)見て、自分のプレイとしっかりと照らし合わせたいと思います。また、3日目にスコアを落としながら、最終日に這い上がれたということも大きかった。このコースに対するモチベーションが高まるのはもちろんのこと、今日のため、目の前の1打のためだけではなく、来週(のトーナメント)とか、また1年後とかを、すごく自分の中で捉えて、プレイすることができたと思います」

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