【男子ゴルフ】石川遼が本格参戦する米ツアーで待ち受ける「本当の敵」 (2ページ目)

  • 三田村昌鳳●文 text by Mitamura Shoho
  • 小内慎司●撮影 photo by Kouchi Shinji

 なぜなら、世界のトッププレイヤーは皆、芝生の種類や配合によって異なる条件をすべて把握し、それに対応した打ち方、技術を身につけているからだ。

 例えば、アメリカのスタンフォード大学には、ゴルフ練習場のショートコース内に、ピート・ダイやアリスター・マッケンジー、ギルハンスやロバート・トレント・ジョーンズなど、世界中の名だたる設計家のデザインをイメージしたグリーン周りやグリーンが設置されている。もちろん、芝生の種類や配合も、それぞれ異なるものが敷いてあって、ゴルフ部の学生たちは、日々そこで練習を積み重ねて、さまざまな条件下で技を磨いている。

 ゆえに、彼らはあらゆる芝の感触を知り尽くしていて、それが体に染みついている。目の前の設定された条件によって、自然と反応できる技術を持ち合わせているのだ。

 極めつけは、ルーク・ドナルドだ。PGAの情報によると、ルーク・ドナルドは昨シーズン、1ピン以内(約2.5m~3m)を1パットで決めた確率が90.2%だったという。通常、良くても70%戦後。それが、90%を超えるというのは、とんでもないことで、どんな芝にも対応できている証拠。世界ランク2位のレベルというのは、それほど精緻な技術を持っているのだ。

 石川はこれから、日常的にそうやって育ってきた選手たちを相手にするのである。だからこそ、彼自身も、今後はあらゆる芝について熟知し、その芝の配合に合わせた技術を、体ごと身につけなければならない。そして、ショートゲームの向上は不可欠だ。

 また、世界で戦う選手たちの練習量は半端じゃない。丸山茂樹によれば、ビジェイ・シンなどは、シーズン中も最後までコースで練習し、あっという間に夕食を済ませると、夜10時まで筋力などのトレーニングを消化。翌日も朝5時には起きて、コースに出て練習をしていたという。

 そのため、かつて米ツアーに参戦した水巻善典は「日本人選手はまず、それだけの練習量をこなす、体力作りから始めなければいけない」と言っていた。それが、米ツアー参戦への「スタート」だと。もともと外国人とは体の作りが違うから、同じように過ごしていたら体が持たないし、壊れてしまうからだ。米ツアーというのは、日本人選手にとっては、それほど過酷なのだ。

 石川もここ数年の間に体を鍛えてきたが、まだまだ足りない。下半身をさらに鍛えて、体幹も強くしていかなければいけないだろう。

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