【男子ゴルフ】国内最終戦を終えて加速する
石川遼の「米ツアーへの意識」

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • 小内慎司●撮影 photo by Kouchi Shinji

 今季の石川は、米ツアーの来季シード権獲得を目指して多くの時間を海外で過ごした。国内では三井住友VISA太平洋マスターズで2年ぶりの勝利(通算10勝目)を飾ったものの、夏場には海外ツアーにおける疲れで腰痛を発症したこともあって、国内賞金ランクは7位と振るわなかった。プロ5年目のシーズンに残した"足跡"にあえて言及しなかったのは、すでに1カ月後には開幕するアメリカツアーに視線が向いているからだろう。

 その一方で、今季の賞金王に輝いた「中年の星」と呼ばれる43歳の藤田の強さについてはこのように語っていた。

「今までの積み重ねがすべてだと思う。僕が一番すごいなと思うのは、妥協をしないこと。試合だと自信に満ちあふれているけれども、練習中はまったく自分のことを認めていない。『もっともっとうまくなれる』と考えながら取り組んでいることがものすごくわかるし、(練習を)やめるときの『今日はこれぐらいにしておこう』というラインが高い。自分もそこを目指さないと」

 観衆に囲まれた表彰式で「今年は私が"最強"ということでよろしいですか?」と呼びかけた藤田は、奇しくもゴルフとの向き合い方について、こう明かすのだった。

「ゴルフは急には絶対にうまくならない。時間を使ってうまくなっていくもの。追求すればするほど、遠回りすることもあるかもしれない。だけど、必ず上達していくものだと思います」

 石川もこの1年、試行錯誤の繰り返しだった。ショットの改造だけでなく、パターを頻繁に変更して日米を転戦していった。たとえ目先の試合で際立つ戦績を残せなくとも、長い目で考えれば遠回りではない――そういう藤田と同一の信念を貫いているからこそ、今シーズンの結果(過去)にも最終戦の結果(現在)にも一喜一憂せず、来季の戦い(未来)にだけ視線を向けているに違いない。

 来季の目標は明確だ。
「再来年以降の(米ツアーの)シード権です」

 石川は年内に2戦を戦ったあと、間断なく1月17日に開幕する米ツアーのヒュマナチャレンジ(アメリカ・カリフォルニア州)から新シーズンをスタートさせる。

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