【男子ゴルフ】青木功とワトソンが語る「全英オープン制覇に欠かせないもの」 (2ページ目)

  • 三田村昌鳳●文 text by Mitamura Shoho
  • photo by Getty Images

 難しさをリストアップすればきりがないが、一番の難題となるのは、やはり海から市街地を通り過ぎていく風だろう。そのうえ、このコースをより難しくしているのは、一方通行の風に対して、ホールのレイアウトがさまざまに変わるため、18ホール中12ホールも打っていく方向が変わることだ。

 つまり、1番から9番まで真っ直ぐ行って、10番から18番まで真っ直ぐ戻ってくるという本来のリンクスコースの作りになっていないのだ。コースの途中、来た方向から折り返すホールがあったり、全体のホールの流れに対して直角に打っていくホールがあったりして、コースは風と違って、単なる一方通行ではない。ホールによって目まぐるしく変わる風をどう読むか、それが最大のポイントとなる。

 加えて、手強いのは、リンクス特有の深いバンカー。それも、以前は18ホールの中にバンカーがなんと365個もあったという、まさにバンカー地獄のコースなのだ。最近は数も減って、2001年大会のときは196個と発表されたが、それでも1ホール平均10個以上のタコ壺バンカーがあり、中には体がすっぽり入ってしまうような深さのバンカーまである。もちろんグリーン周りもバンカーで囲まれているホールがほとんどで、それをどれだけ避けられるかが、スコアメイクにつながる。

 ここで、石川遼はどんな闘いを見せてくれるのだろうか。

 過去5度の優勝を果たしているトム・ワトソンが、初めて全英オープンに出場したのは1974年だった。その際、彼は「本当はリンクスタイプのコースでプレイするのが、嫌いだったんですよ」と言っていた。けれどもその後、「自分のゴルフを見つめ、リンクスでやる全英オープンを何度か経験したことによって、僕のゴルフは格段の幅を持つことになったんです」という。

 リンクスタイプのコースでは、単に飛ばすとか、ショットの精度がいいとか関係なく、普通なら合格点以上のショットであっても、フェアウェーにある数多くのマウンド(起伏)のキックによって、ボールの行方が変わる。ナイスショットが必ずしも報われず、さらに深いラフや無数のバンカーがあるために、常に予測不能な状況が起こりうるのだ。

 そうしたことを踏まえて、「石川遼は、もっとリンクスを経験すべきである」という意見がある。石川は、いつもがむしゃらにプレイする余り、ついつい直線的な攻略になる傾向があるからだろう。それは、ショットの善し悪しにかかわらず、心の幅、ゲームの幅というものを、自分で窮屈にしてしまうことになる。そうすると、不測の事態に対処することは、なかなか困難である。

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