【ゴルフ】『女王』アン・ソンジュさえも陥った、極度のスランプ (3ページ目)

  • 慎 武宏●取材・構成 text by Shin Mukoeng
  • 小内慎司●撮影 photo by Kouchi Shinji

 その結果、徐々に彼女らしさが戻っていきました。大幅なスイングの改造をすることなく、その後も目覚しい活躍を見せてくれています。

 そういえば、そうした状況の中で、彼女の進路についての相談も受けましたね。ソンジュは、アメリカか日本のどちらでプレイすべきか、迷っていました。

 私はそこで、日本でのプレイを勧めました。日本なら韓国と文化的に近いですし、韓国から距離も近いですからね。もちろん、アメリカという舞台も魅力的で、挑戦し甲斐はあるかもしれませんが、日本もアメリカに負けないくらいのレベルの高さを誇っていますし、日本で揉まれてから、アメリカに行ってもいいのではないか、とアドバイスしました。

 とはいえ、もっとも重要なのは、ソンジュの思いです。ソンジュ自身がハッピーな気持ちでプレイできる環境を選ぶべきだと念を押しました。
「アメリカにしろ、日本にしろ、自分がゴルフを楽しんで、ハッピーになれる場所に行くべき。海外に行って辛い思いをするくらいなら、行かないほうがいい」とアドバイスしたんです。

 そんな私のアドバイスのせいかわかりませんが、ソンジジュは日本を選び、1年目で新人王と賞金女王のタイトルを獲得しました。それはもう、ハッピーだったと思いますよ(笑)。

 にもかかわらず、賞金女王になった彼女は、私に電話をかけてきてこう言うんですよ。
「コーチ、日本で苦労に苦労を重ねて、やっと賞金女王になりました。今も苦労の連続です」と(笑)。

 その明るい声が日本での選手生活の充実ぶりをうかがわせました。ソンジュは、まだまだ成長を遂げるはずです。
(つづく)

  
キム・ジョンイル(金 鍾一)

1969年1月10日生まれ。2006年からKGA(韓国ゴルフ協会)国家代表・代表常備軍のコーチングスタッフとなり、2008年から2011年までは女子代表首席コーチを務める。2010年アジア大会では個人・団体の金メダル、2010年世界選手権でも個人・団体で金2、銅1のメダル獲得へ代表チームを導いた。その功績をたたえられ、2011年には韓国の体育勲章である『巨像章(コサンジャン)』を授与される。2011年KGA功労賞も受賞。

検証・韓流ゴルフ「強さの秘密」(全13回)>

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