【ゴルフ】韓国代表コーチが語る「チェ・ナヨンに最初に教えたこと」 (3ページ目)

  • 慎 武宏●取材・構成 text&photo by Shin Mukoeng
  • photo by Getty Images

 そして彼女は、2010年に賞金女王に輝いたときに、"ベアトロフィー賞(年間平均最少ストローク)"も受賞しました。それは、彼女がアメリカに行っても飛距離に惑わされず、ゴルフの本質を忘れていない証だと思います。

 アメリカに渡ると、欧米選手のパワーに触発されて、飛距離への憧れを抱く選手は決して少なくありません。プロゴルファーならば、誰もが飛距離を少しでも伸ばしたいと思っていますから、それは仕方がないことですが、アジア人と欧米人では、そもそも骨格も体つきも異なります。飛距離に差が出るのは、当然のことなのです。

 車で例えると、欧米選手が5000ccクラスだとしたら、アジア人選手は2000ccクラス。排気量が違うのに、パワーで勝負しても勝ち目はありません。無理してパワーを求めてオーバーヒートしたり、エンジン構造そのものが狂ってしまったりしては、元も子もないのです。事実、飛距離への欲望からスイングを改造したのはいいけれども、そのせいで本来のフォームやリズムを崩してスランプに陥った韓国人選手もたくさんいます。

 結局、飛距離で対抗するのではなく、正確性で勝負することこそ、アジア人の選手がアメリカで勝つための近道であり、生きる道なのです。だいたい、2000ccの自動車は小回りが利くし、ハンドルコントロールも簡単でしょ?

 チェ・ナヨンはその真理を、身を持って証明してくれた最高のモデルケースだと、私は思っています。
(つづく)

  キム・ジョンイル(金 鍾一)
1969年1月10日生まれ。2006年からKGA(韓国ゴルフ協会)国家代表・代表常備軍のコーチングスタッフとなり、2008年から2011年までは女子代表首席コーチを務める。2010年アジア大会では個人・団体の金メダル、2010年世界選手権でも個人・団体で金2、銅1のメダル獲得へ代表チームを導いた。その功績をたたえられ、2011年には韓国の体育勲章である『巨像章(コサンジャン)』を授与される。2011年KGA功労賞も受賞。

検証・韓流ゴルフ「強さの秘密」(全13回)>

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