【ゴルフ】韓国代表コーチが明かす「イ・ボミが強くなった理由」 (2ページ目)

  • 慎 武宏●取材・構成 text&photo by Shin Mukoeng
  • 小内慎司●撮影 photo by Kouchi Shinji

 韓国の選手たちは本当によく練習します。そして、代表や代表常備軍を経験すると、より一層ゴルフに打ち込む傾向があると思います。代表合宿などで同世代のライバルと寝食をともにし、一緒に練習をこなすことで、競争意欲が刺激され、それが向上心へと転化するのでしょうね。

 私は代表コーチングスタッフとして6年間、主に女子選手たちを指導してきましたが、その際個人的に感じたことは、競争心と向上心が重なって「私にもできる」という自信というか、メンタリティーが、韓国人ゴルファーには備わっているということです。そんなところにも、強さの秘密があるのかもしれません。

 例えば、昨年から日本でもプレイするイ・ボミがそうです。彼女は一昨年、KLPGA(韓国女子ツアー)の賞金女王に輝き、今年は日本ツアーで初優勝を遂げましたが、アマチュア時代はあまり有名な選手ではありませんでした。国家代表に選出されたことは一度もなく、その予備軍である代表常備軍に選ばれたのも、2006年の一度だけ。それも、高校3年生のときでした。

 彼女と同世代のチェ・ナヨンは中学1年生で代表常備軍に選ばれ、中学3年生のときに国家代表に昇格しています。それと比べると、高校3年生でやっと代表常備軍入りしたボミは遅咲きで、代表合宿に参加する選手の中では、どちらかというと地味な存在でした。

 ただ、それは無理もない話です。彼女はもともと江原道という田舎町の出身で、本格的にゴルフを始めたのも、同世代に比べると遅かったですからね。家庭事情も決して裕福なほうではなかったので、練習環境も十分ではなく、コース練習などの実戦トレーニングもあまり積めなかったのです。相当な努力を重ねて、代表常備軍に選ばれたタイプでした。

 実際、ボミは本当に努力家でした。代表と代表常備軍が合同で行なう合宿では、同世代はもちろん先輩選手がネを上げる体力トレーニングでさえ、いつも笑顔でこなしていましたし、練習法やゴルフ理論を学ぶ夜の講義メニューのときも、私たちコーチ陣の言葉をひと言でも聞き逃すまいと、真剣な眼差しでメモを取っていました。

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