【ゴルフ】強靭な選手を次々に輩出する、韓国・国家代表システムの全貌

  • 慎 武宏●取材・構成 text by Shin Mukoeng
  • 小内慎司●撮影 photo by Kouchi Shinji

 そんな韓国ジュニアゴルファーたちにとって、日本で賞金王になったキム・キョンテや、米女子ツアーで活躍するシン・ジエは憧れの存在です。そして、彼らのように、まずは国家代表になることが、ひとつの目標になっています。サッカーや五輪種目と同様、ゴルフ界でも国家代表になることが、誰もが認めるエリートコースになってきたからです。

 実際、韓国ゴルフの強さの秘密を語るときに、触れないわけにはいかないのが、KGA(韓国ゴルフ協会)が実施する、国家代表・代表常備軍制度です。キム・キョンテをはじめ、多くの選手がアマチュア時代に国家代表、もしくはその予備軍である常備軍を経験しています。

 KGAが、この国家代表・代表常備軍制度を導入したのは、1983年。3年後に迫ったアジア大会を意識して、協会主導で体系的に代表選手を育成・強化するようになりました。

 選手たちがこの代表入りを目指すのは、KGA専属コーチのもとで技術を磨くことができるだけではなく、ウエイトトレーニングやメンタルトレーニング、ゴルフ理論やマナー講義などを体系的に学ぶことができるからです。

 さらに、現役プロとのラウンドもある合宿は、年間150日以上。日本の宮崎などで行なわれる海外遠征もあって、その費用のすべてをKGAが負担してくれるのです。韓国でも富裕層のスポーツとされるゴルフだけに、無料で充実したレッスンを受けられ、プロへの下準備ができることは、選手にとっても、父兄にとっても大きな魅力であることは間違いないでしょう。

 ただし、それは非常に狭き門です。国家代表になって、そうした恩恵に授かれるのは、年間で男女各6名だけです。

 そのうえ、国家代表になるためには、まずその予備軍と言える代表常備軍メンバーにならなければいけません。そのメンバーになれるのも、小学生(5、6年生)8名、中学生22名、高校生26名、大学生6名と限られています。

 メンバーは毎年入れ替わり、その選出は実力主義を採用しています。国内外で行なわれる1年間の公式戦(10~15試合)の成績をポイント換算し、そのポイントによって、代表常備軍メンバーが決まる仕組みになっています。

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