【女子ゴルフ】木戸愛「早く優勝して、父の涙を見てみたい」

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • 鈴木愛子●撮影 photo by Suzuki Aiko

 木戸は、何について焦りを感じていたのだろうか。

「結果、ですね。やるべきことをやっていないのに結果を求めてしまうというか、結果が出ていないのに先のこと(上の技術)に手を伸ばそうとしてしまうというか......。そんな気持ちの焦りがありましたし、実際にゴルフをしていても、ひとつひとつの動作が早くなったりしていたんです。それでよく、コーチや両親からも『焦りが見える』と言われていました。でも、私自身は『違う』って、認めたくなかったので、心の中での葛藤が昨年はずっと続いていましたね」

「ゴルフのことをずっと考えていても苦にならない」という木戸愛。その明るい表情から、精神的にも充実していることがうかがえる。「ゴルフのことをずっと考えていても苦にならない」という木戸愛。その明るい表情から、精神的にも充実していることがうかがえる。 木戸がそれほどまでに結果を求めたのは、同世代の活躍に刺激を受けたからに他ならない。一昨年の2010年シーズン、同い年の宮里美香が「平成生まれ」選手の先陣を切って、日本女子オープンを制覇。そして10月には、同学年の森田理香子がツアー初優勝(IDC大塚家具レディス)を飾った。さらに昨年も、4月のフジサンケイレディスクラシックで同い年の金田久美子が勝利し、「自分も」という思いが、木戸の内面で一層膨らんでいったのだろう。

「(同世代の活躍を)気にしていない、と言うとウソになりますね......」
 木戸は、そう言って苦笑いを浮かべた。

 また、木戸は、宮里藍や有村智恵らを輩出してきた名門・東北高校の出身である。そのプライドもあるだろうし、偉大な先輩たちに続いていきたい、という気持ちも強い。ゆえに、ツアー優勝を飾った同世代の面々に「早く追いつきたいし、(自分も)勝ちたい」と、並々ならぬ意欲を見せる。

「ただ、今シーズンは、焦らずに(みんなに)追いつければいいかな、という気持ちでいます。そう思えたのは、充実したオフを過ごせたからですね。昨年は、ショットは良かったんですが、課題として残ったのがショートゲームだったんです。ショートゲームがしっかりできていれば優勝争いできるという感触もあったので、このオフはショートゲームの練習に力を入れて取り組みました。開幕してここまで、まだショートゲームでリズムを作っていけないもどかしさはありますが、昨年よりも確実にレベルアップしていますし、自分に手応えを感じています。ですから、結果に惑わされず、オフに取り組んだことを継続してやり抜こうと思っています」

 自分のゴルフに手応えを感じ、余裕も出てきたのだろう。オン、オフの気持ちの切り替えも、以前に比べてうまくできるようになってきたという。

「これまでは、いいときも悪いときも、とにかく練習、練習、だったんです。昔から一直線な性格なので......。でも今は、ゴルフを離れてリフレッシュする時間を作ったりしています。どんなリフレッシュが自分に合うのか、いろいろ試しながらですけどね。買物をしながらもゴルフのことがなかなか頭から離れなかったりするので(笑)」

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