【男子ゴルフ】松山英樹の崩壊をもたらした、オーガスタの「罠」の正体 (2ページ目)

  • 三田村昌鳳●文 text by Mitamura Shoho
  • photo by Getty Images

 予選通過を果たした2日目を終えて、松山はこう語っていた。
「(予選を突破して)ホッとしました。ローアマというより、来年の出場権(16位以内)のほうがほしい。(ローアマに)なれなくても、そっちは取れるようにしたい。今、31位タイですよね。あと4つくらい伸ばせば可能性はあると思うので、しっかりやっていきたいと思う」

 つまり彼は、目標のその2である「ローアマを獲る」という意識でプレイするのではなく、全体で「16位以内に入る」という、3つ目の目標だけに絞ったプレイをしようと決めていたのである。それは、東北福祉大の阿部靖彦監督も容認していた。昨年、ローアマを獲得し、この1年間、監督も松山も、次なる高みの目標を設定していたのだ。そのために松山は、昨年のマスターズが終わってからすぐに、体幹を鍛えるためのトレーニングに着手した。

 ゴルフゲームの難しいところは、実は、ここにある。

 手堅く、今のスコアを落とさずに守備中心にプレイする場合と、一気にバーディーを狙って上位を目指すプレイをする場合では、ゲームの組み立て、進め方が大きく違ってくる。上位を目指すならば、後者のゴルフが必要だ。

 そのうえで、ゴルフトーナメントは4日間72ホールで戦われる。それは、まるで起・承・転・結のように、3日目、最終日のゴルフをどう組み立てるかで決まる。

「転」となる3日目。松山は当然、攻めて行くゴルフを選んだ。前半でふたつのバーディーを奪って通算1アンダー。あわやベスト10に入る勢いだったが、後半の13番、15番をボギーとしてパープレイ。27位タイに止まった。

「この緊張感?(経験)ないです。まだそういう舞台に立っていないのかもしれないけど、(経験して)良かったです。明日はアンダーで回りたいと思います。アンダーで回らないと、16位以内には入ってこないと思うので......」

 そう語った松山だったが、このとき、少し違和感を覚えていた。

 それは、後半になってパッティングがイメージ通りに決まらないことだった。パッティングは松山の大きな武器である。その違和感を持ちながら、最終日も「攻める」ゴルフをしなければならなかった。

 最終日、スタート前の練習グリーンでは、まずまずの感触があった。けれども、いざ1番ホールをスタートすると、「(2打目をショートして)いいアプローチで2mほどに寄せて、(パットは)いい感じで打てたはずなのに、外れてしまった。それで、少し不安感を抱きました」という。

 それでも、松山は逃げることをしなかった......。

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