【男子ゴルフ】石川遼が米ツアーで勝つために必要な『2つの決別』 (2ページ目)

  • 三田村昌鳳●文 text by Mitamura Shoho
  • photo by Getty Images

 女子の世界に限ったことではない。男子で飛距離がなくても、世界の頂点に君臨している選手がいる。世界ランキングトップのルーク・ドナルドだ。昨季、彼の平均飛距離は284.1ヤード。米ツアーに参加する選手の中で147位だった。それでも結果を出せるのは、449ホール連続3パットなしという、驚異的な安定感を誇るパッティングの技術を持っているからだ。

 石川も同様に、自分の武器を見つけて、飛距離で勝負しなくなれば、間違いなくチャンスは巡ってくる。世界で輝かしい実績を作る日本人プレイヤーの誕生も、現実味を帯びてくるだろう。石川にはその素質がある。過去に米ツアーに挑戦した選手たちと比較して、格段に若いのも強みだ。青木功が海外で活躍しだしたのは36歳、丸山茂樹が本格参戦したのは31歳だった。彼らより10年~15年も早くなるわけで、3勝した丸山以上の勝利を挙げる可能性は高く、ビッグタイトルを手にする期待さえ膨らむ。

ティーチングプロという名の
パートナーが必要不可欠

 その第一歩を刻むうえで、石川が気をつけることは、準備を怠らないことだろう。

 まずは自分に合った拠点を築くこと。米ツアーに参加する選手は、ほとんどフル参戦しない。3勤1休とか4勤1休というスタンスで、オンとオフのメリハリを大切にし、オフの間は十分にリラックスして英気を養い、その1週間、2週間という時間の中で次の戦いに向けての調整をする。その大事な時間を過ごす拠点選びは最重要項目だ。一番いいと思うのは、ゴルフ場が多く、雨の少ないフロリダ。多くの選手がセキュリティーもしっかりしているオーランドに拠点を置いている。とはいえ、宮里はロサンゼルスで、丸山もそうだった。何より大切なのは、自分が最も過ごしやすい場所を選ぶことだ。

 さらに、アメリカのコースでプレイするわけだから、その特性を知り尽くした現地のコーチをつけるべきだ。優秀なコーチであれば、選手を第三者的な目で見て、あらゆる情報の中から大事なものだけを選択し、的確なアドバイスを与えてくれる。石川にとって、アメリカでも着実にステップアップしていくためには、絶対に欠かすことのできないパートナーになるだろう。いろんなティーチングプロの指導を受けながら、相性のいいコーチを見つけてほしいと思う。

 そうした準備をしたうえで、自らの立ち位置というものも、グローバル化していかなくてはいけない。そのために、例えばナイキなどとフル契約してもいい。そうすれば、クラブフィッティングにしろ、何にしろ、すべてが現地でこなせる。移動の際にはナイキの専用機で専属のトッププレイヤーたちとも交流ができ、いろいろな人間関係が築ける。あわせて結果がともなってくれば、自然と存在感を示せるだろう。メジャーリーガーのイチローしかり、テニスプレイヤーの錦織圭しかり、そういうポジションを日本ではなく、世界でしっかり確立している。同じように石川も、アメリカで確固たる地位を築いていってほしい。

 さて、最後にひとつ加えておきたい。石川が米ツアーに本格参戦するとなれば、心配されるのは日本の男子ツアーだが、石川のいないトーナメントというものを、ゴルフ界は味わうべきだと思っている。それが、日本のトーナメントのあり方について、改めて考え直すきっかけになるだろうし、選手の意識を含めて、日本男子ツアーに大きな変革をもたらすに違いないからだ。そして近い将来、石川遼のような新たなスターが生まれることを心から願っている。

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