【男子ゴルフ】マスターズ出場へ正念場。
石川遼が「機械になりたい」と吐露した真意

  • 武川玲子●協力 cooperation by Takekawa Reiko text by Sportiva
  • photo by Getty Images

 そのまま最終日も、ショットは左右にぶれ続けた。10番スタート2ホール目の11番でボギー、13番でダブルボーギーを叩くと、石川の表情からはすっかり覇気が消え、彼の戦いは早々に終わった。

 ショットの乱調について、石川は「まだスイングが固まっていない証拠。練習量で補って、コースでもしっかりとできるようにスイングを固めていきたい」と語った。しかし、それだけではないだろう。マスターズ出場へ、結果を求める潜在意識が微妙なスイングの変化をもたらしたのではないだろうか。

 例えば、第2ラウンドで未消化だった2ホールを終えて第3ラウンドを迎えたとき、石川は「朝の2ホールはいい感じだった。そのあと、練習場でも良かったので、(第3ラウンドの)スタートをすごく楽しみにしていた」にもかかわらず、第3ラウンドでは「左に打ってはいけない、というのが特にインコースで多くて、そこで右にミスしがちだった。そのときはたいてい、左を嫌がって右にミスショットしてしまう、昔の自分のスイングになっていた」という。それはやはり、結果を求めるがゆえだろう。

 この試合の前、マスターズ出場への決意を示すと同時に、石川は「この2カ月の大きな狙いは、メジャーで優勝するためのゴルフを作っていくこと。結果を求めて、スケールの小さいゴルフをしないようにしたい」と語った。しかしそれも、結果へと逸(はや)る気持ちを抑えるために、自らに言い聞かせているようでもあった。

 予選ラウンドで「全然、自分のスイングができていない感じがします」と石川自身が漏らした不安も、本音を言えば、おそらく解消されていないのではないだろうか。

「練習場では理想のスイングができることもあるけれども、それが試合でできないという形がずっと続いている。ファーマーズのときにはいい感じで打てていて、そこでもう『できた』と思い込んでしまうのが人間。だから、できなくなってしまうと『おかしいな、おかしいな』と混乱してしまう。その繰り返しですね。できるならば、自分がマシーンに、精密機械になりたい。ドライバーや平らなところのアイアンショット、そしてパターとか、同じスイングを機械的に繰り返して打てるようになりたい」

 今回の成績で石川の世界ランキングは56位へと後退した(2月21日現在)。次なるアクセンチュアマッチプレー選手権(2月22日~)で最低2勝しなければ、出場を予定しているキャデラック選手権(3月8日~11日)の出場権(世界ランク50位以内)さえ得られない可能性もある。マスターズ出場へ非常に厳しい状況を迎えているが、その行方を左右する大一番に、石川は不安を抱えたまま挑むことになる。

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