【男子ゴルフ】「自分は攻撃的ではない」と告白した石川遼の成長 (2ページ目)

  • 武川玲子●協力 cooperation by Takekawa Reiko text by Sportiva
  • 宮本 卓●撮影 photo by Miyamoto Taku

 石川が「教材」にしたのは、トーナメント会場となるトーリーパインズGCで開催された2008年全米オープンで、トップのメディエートを1打差で追うタイガー・ウッズが最終日最終ホールで見せたバーディーパットだ。ボールは芝目のきついグリーン上でポンポンと跳ねながらも、鮮やかな回転を見せてカップに吸い込まれた。テレビ中継でも大写しになったそのシーンが、今でも石川の脳裏に焼きついているという。ゆえに大会前の練習では、どんな芝目にも負けないウッズの打ったパットをイメージしながら、パターの芯でボールの芯をとらえる練習を徹底。その成果が本番でも生かされた。

 さらに、コースマネジメントも光っていた。なかでも印象深いのは、初日後半5番のセカンドショットだ。

「ライは前下がり。ピンは右に切ってあって、右のバンカーに入れたら(次のショットは)絶対に寄らない状況でした。そこで、勇気を持って左のセーフティーなところに打っていけました。ショットに自信があったからこそ、選択できたプレイだと思います。逆に自信もなく、勇気もなければ、ピンを狙っていたかもしれない。あのショットは、今までの自分にはできなかった」

 後半の1番、2番と連続でバーディーチャンスを逃し、4番でボギーを叩いた。その直後の5番でティーショットを右に曲げた。これまでの石川だったら、セカンドで無理をして一層傷口を広げていたかもしれない。しかし石川は危険を冒さず、その後のスコアアップにつなげた。

「プロに転向してからずっと『攻撃的なゴルフ』と言われてきました。もちろん自分で守備的にやっているつもりはなかったけれども、攻撃的にやっているつもりもありませんでした。また、自分がピンを狙っていく姿に対して『果敢な攻め』とか『勇気がある』と見られていましたけれども、自分の中では『それは逆だな』と思っていました。勇気や自信がないから、ピンに向かうしかなかった。自分が狙ったところに打てる技術があれば、以前からもっとマネジメントしていくことができたと思います。それと、ゴルフではいかに自分を知り、自分の技量にあった攻めができるかが重要。そういうプレイがこれまではできませんでしたが、それが今ではラウンド中に1回はできるようになった。そこに喜びを感じています」

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