【ゴルフ】『女王』アン・ソンジュさえも陥った、極度のスランプ

  • 慎 武宏●取材・構成 text by Shin Mukoeng
  • 小内慎司●撮影 photo by Kouchi Shinji

今季も国内メジャーを制すなど、安定した強さを見せているアン・ソンジュ。今季も国内メジャーを制すなど、安定した強さを見せているアン・ソンジュ。検証・韓流ゴルフ「強さの秘密」
連載◆第7回

 日本女子ゴルフ界で、今最も強い選手は誰なのか? さまざまな意見があるだろうが、実績では文句なしにアン・ソンジュだろう。

 2010年から日本ツアーに参戦し、開幕戦のダイキンオーキッドレディスで、デビュー戦でのツアー初優勝という快挙を果たすと、その年に4勝をマーク。参戦1年目で、いきなり賞金女王のタイトルを手にした。さらに、翌2011年も4勝し、2年連続の賞金女王に輝いた。今年も、5月に行なわれた国内メジャー第1弾のワールドレディスサロンパスカップで、プレーオフを制して連覇を達成。3年連続の賞金女王を狙える位置にいる(7月14日現在、賞金ランク2位。1位は全美貞)。

 KGA(韓国ゴルフ協会)の国家代表および代表常備軍の女子担当コーチだったキム・ジョンイルコーチは、そんな彼女の活躍をどう見ているのか。若き日の彼女を知る、キムコーチが意外なエピソードを教えてくれた。

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 アン・ソンジュのことは、彼女が小学生の頃からよく知っています。彼女の優れた胆力と集中力の高さには目を見張るものがありますが、それは当時から備わっていました。肝が据わっていて、とても度胸のある選手でしたね。勝負どころで動じることはなく、「ここぞ」というときにスーパーショットを決めてくる。ピンチのときもどっしりと構えて、冷静に自分のゴルフを貫けるタイプでした。

 そして何より、「ナンバーワンになる」ということに、とても貪欲な子でしたね。

 ソンジュが代表常備軍に選ばれたのは、高校2年生のときでした。彼女のひとつ上には、今年のアメリカ女子ツアーのメジャー第1弾、クラフトナビスコ選手権を制したユ・ソンヨンがいて、同い年にも先日の全米女子オープンで優勝したチェ・ナヨンが、ひとつ下にはシン・ジエらがいたのですが、とにかく「ライバルたちに勝ちたい」という意欲は凄まじいものがありました。代表合宿でも「私が一番だ」というオーラをみなぎらせて練習していましたね。

 2005年、高校在学中にプロに転向したあとも、彼女はまったく物おじせず、2006年には韓国女子ツアーで初優勝。翌2007年には、3勝して賞金ランク3位になりました。それはすべて、彼女の勝気な性格のおかげだと思います。

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