「テクノロジーの力と5人交代制」「メッシとロナウドの明暗」。風間八宏が振り返るカタールW杯

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

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カタールW杯総括 大会全体編

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独自の技術論で、サッカー界に大きな影響を与えている風間八宏氏が、カタールW杯を振り返る。こちらでは初の中東開催となった今大会全体について。見どころの多い大会となったが、風間氏はどのように感じただろうか。

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【テクノロジーの力と5人交代制】

 リオネル・メッシを擁するアルゼンチンが、通算3度目の優勝を果たしたカタールW杯。過去のW杯決勝戦のなかでも屈指の名勝負となったフランスとの激闘をはじめ、モロッコの躍進や数々のジャイアントキリングなど、初めて中東で開催されたW杯は見どころの多い大会でもあった。

 風間八宏氏は、今回のW杯をどのように見ていたのか。まずは、大会全体を通して特に気になったポイントを挙げてもらった。

「一番は、テクノロジーです。そもそも11月から12月の時期でも猛暑のカタールでは高品質なサッカーは望めないという話から始まった大会でしたが、当初の懸念を払拭し、カタールが冷房完備のハイテクスタジアムを用意して、サッカーのクオリティをしっかり保つことができました。

 また、オフサイドのセミオートマ化やVARの進化も見逃せませんし、三笘薫のラインギリギリのクロスでスポットライトを浴びたように、人間の目では見極められない部分を可視化したのも、テクノロジーの力です。

 そういう意味で、以前であれば不可能だろうと思われたことが、可能になってきているのを改めて実感できた大会でした。これからは、開催時期や開催国の考え方や選定方法なども、大きく変わっていくかもしれません」

 そしてもうひとつ、ピッチに目を向けた場合、今大会で押さえておきたいポイントとして挙げられるのが、W杯で初めて導入された5人交代制だという。

「交代枠が5人になったW杯を見ると、クラブレベルのリーグ戦や大会とは異なる特徴が見て取れました。クラブレベルでは、資金力があって選手層の厚いビッグクラブに有利と言われていますが、代表チームの場合は、強豪国ほど5人交代制の恩恵を受けていない印象を受けます。

 なぜなら、メッシ、(キリアン・)エムバペ、(ルカ・)モドリッチなど、たとえば4強に残ったチームにはベンチに下げられないような絶対的なタレントが存在しているので、拮抗した試合になればなるほど5人の交代枠を使いきれない傾向があります。

 逆に、突出した個は存在せずとも、平均的な選手を揃えるチームは、疲れた選手がいれば次々と交代カードを切ってチームとしてのエネルギーをキープすることができる。日本代表もそのひとつだと思いますが、そういったチームのほうが5人交代制をうまく活用できるというのが、ひとつの傾向として見えてきたのではないかと思います」

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