サッカー日本代表がどうしても抑えたい、スペイン代表の2試合を徹底分析。驚異的なパス本数で攻撃の仕上げは左サイドから (2ページ目)

  • 中山 淳●文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by JMPA

攻撃の最後は左サイドから仕上げる

 そのスペインに対して、2戦目で対戦したドイツはどのような対策を打ったのか。

 ドイツの特徴を端的に表現すれば、縦に速いサッカーになる。ハンジ・フリック監督が就任した昨年8月以降と比べても、最近はさらに速くなった印象だ。中盤から前線の主軸の多くがバイエルンに所属していることもあり、そのバイエルンを指揮するユリアン・ナーゲルスマンが標ぼうするスタイルに似通ってきたと見ることもできる。いずれにしても、ドイツにとってスペインは、自分たちの強みを発揮しやすい相手と言えた。

 そんななか、フリック監督は、まずはスペインの中盤を抑えて自由にパスを回させないという作戦に出た。立ち上がりこそうまく機能させられなかったが、次第にその策は奏功した。

 具体的には、4-2-3-1の1トップ下に中盤のイルカイ・ギュンドアンを配置し、対峙するブスケツ経由のビルドアップを封鎖。ダブルボランチのヨシュア・キミッヒとレオン・ゴレツカが、ガビとペドリをマークして、少なくともピッチ中央の覇権を与えないという目的を、ほぼ達成することはできた。

 しかし、その程度の対策でめげないのがスペインだ。次第にドイツが優勢になっていくなか、0-0で迎えた後半62分、敵陣でロストしたあとにボールを即時回収し、10本のパスをつないでからアルバロ・モラタがフィニッシュし、1点をリードしている。

 そのシーンでは、ドイツのティロ・ケーラーが自陣ボックス内でクリアしたボールを、敵陣でエメリク・ラポルトが回収し、一度左に展開してから、今度は右に展開。さらに右からブスケツ経由で左のジョルディ・アルバにパスを回すと、ニアに入れたボールをモラタが合わせている。

 その左右の揺さぶりに、ドイツはついていけなかった。とくにスペインの攻撃の武器とされる左SBジョルディ・アルバの攻撃参加に対し、中盤とDF4枚のスライドが間に合わなかった。

 スペインの攻撃を検証すると、とりわけアタッキングサードでの攻撃が左サイドに偏っていることがわかる。たとえば、コスタリカ戦では50%が左サイドからの攻撃で、中央は13%、右サイドが20%(左中央=7%、右中央=10%)。ドイツ戦でも中央が9%、右サイドが22%に対して、左サイドは52%にもおよんでいる(左中央=13%、右中央=4%)。

 つまりこのデータからは、左SBのジョルディ・アルバ、もしくは途中出場で左SBを務めるアレハンドロ・バルデの攻撃参加が、スペインの崩しにおける"ファイナルピース"になっていることが見て取れる。スペインと対戦する場合、それは見逃せないポイントだ。

 もっとも、前半途中から優勢だったドイツは先制点を許したものの、終盤に途中出場のニクラス・フュルクルクのゴールで追いつき、最終的にはシュート11本(枠内4本)を記録。7本(枠内3本)のスペインを上回るなど、ポゼッションサッカーに翻弄されてはいなかった。もともと両チームの実力が拮抗していたことを考慮すれば、1-1は妥当な結果と言えるだろう。

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