ドイツのミュラーはなぜ神出鬼没なのか? 風間八宏は「ボールを持たずに試合をコントロールできる」と分析

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

風間八宏のサッカー深堀りSTYLE

第16回:トーマス・ミュラー(バイエルン/ドイツ)

独自の技術論で、サッカー界に大きな影響を与えている風間八宏氏が、国内外のトップクラスの選手のテクニック、戦術を深く解説。今回は、カタールW杯で日本の最大の難敵になるであろう、ドイツのミュラー。相手の急所を読み、神出鬼没なポジションニングで試合を決める、その特異なプレースタイルを紹介する。

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ボールを持たずに試合をコントロールできる選手

 ドイツの名門バイエルンでトップデビューを果たした2008-09シーズン以降、公式戦600試合以上に出場し、200を超えるゴールを積み重ねてきたドイツサッカー界の生きるレジェンド、トーマス・ミュラー。

ドイツ代表やバイエルンでレジェンド級の活躍を続けるトーマス・ミュラードイツ代表やバイエルンでレジェンド級の活躍を続けるトーマス・ミュラーこの記事に関連する写真を見る しかもその間、大きなケガもなく、スランプもないミュラーは、いつも重要な試合で重要な役割を担い、第一線で活躍し続けてきた。

 それは、2010年のデビュー以来、118試合44得点を記録しているドイツ代表でも変わらない。W杯も過去3度出場し、2014年ブラジルW杯では優勝に大きく貢献。来るカタールW杯も、チームの中軸として4大会連続の出場が確実視されている。

 近代ドイツを代表する選手となったミュラーも、現在は33歳になった。客観的に見て、他の一流選手と比べて突出したボールテクニックやスピードがあるわけでもないミュラーが、これだけ長く世界のトップレベルで活躍するためには、それだけの理由があるはずだ。

 そんな素朴な疑問について、長年ミュラーを見続けてきた風間八宏氏が、その独特なプレースタイルを解説してくれた。

「ミュラーという選手は、試合中にあまりボールを触らなくても平気で、触らない時にも仕事ができる珍しいタイプの選手です。いつも相手の急所はどこかを考えながら動いていて、それによって相手を動かすことができます。

 にもかかわらず、大事な場面でゴール前に顔を出してゴールを決め、アシストも量産できる。それが、相手につかまらない理由であり、彼のプレースタイルのなかでも特筆すべきポイントだと思います。

 わかりやすく言えば、クロアチア代表のルカ・モドリッチはボールを保持して試合をコントロールする選手ですが、ミュラーはボールを持たなくても試合をコントロールできる選手。どちらも相手チーム全体がよく見えているからできることですが、ミュラーのような選手は圧倒的に少ないです。

 そういう意味では、モドリッチのようなプレーはその凄さがわかりやすいですが、ミュラーのプレーの凄さはわかりにくい。それは相手DFも同じで、試合中にミュラーの動きを見てその狙いを読みとるのは、相当に難易度が高いと思います」

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