久保建英、決勝ゴールの活躍に指揮官もご満悦。ソシエダで一気に輝きを増した理由とは?

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

「久保はずっと私のことを知っていたのか、誰かが彼に山ほどチーム資料を送っていたのか。まるで3年間、ずっと一緒に戦ってきた選手のようにプレーした」

 2022-23シーズンの開幕戦後、レアル・ソシエダのイマノル・アルグアシル監督は冗談もまじえて語るほどご満悦で、これほどの賛辞はないだろう。

 先発でデビューを飾った久保建英(21歳)は、水を得た魚のようだった。ボールを受け、弾き、運び、再び受ける。その繰り返しの精度やタイミングに、彼の才能が詰まっていた。味方とのコンビネーションは重なるほどに心地よく、あまつさえ決勝点まで叩き込んだ。

「これ以上、いいデビュー戦はあり得ない」

 スペイン大手スポーツ紙『アス』はそう見出しを打って、0-1で勝利した一戦の立役者である久保のプレーを称えた。

 今後の期待感が漂う開幕戦になったが、スペイン国内で評価を落としていた久保が一気に輝きを増した理由とは?

カディス戦に先発、決勝ゴールを決めた久保建英(レアル・ソシエダ)カディス戦に先発、決勝ゴールを決めた久保建英(レアル・ソシエダ)この記事に関連する写真を見る 開幕節のカディス戦、レアル・ソシエダの久保は4-4-2の2トップの一角でプレーしている。トップ下のダビド・シルバとの連係はまさに阿吽の呼吸だった。ポジション上はFWだったが、自由にアタッキングエリアに顔を出し、神出鬼没で相手にダメージを与えた。

 これまでも書いてきたことだが、久保は「アタッカーとしてのポリバレント性を生かすべき選手」で、まさにそのポジションを得ていた。ギャップで巧みにボールを受け、狡猾にフリックを使い、ターンにも優れるだけに、敵を絞らせず撹乱できる。左右にも流れ、そこで独特の間合いのドリブルから、クロスやラストパスを入れられるのだ。

 レアル・ソシエダには左利き選手が多く、それが攻撃での多彩さにつながっているが、同じ左利きである久保も落ち着くべきところに落ち着いた感があった。トップ下のダビド・シルバ、左MFのミケル・メリーノ、左サイドバックのディエゴ・リコ、そして右MFのブライス・メンデスまで、レフティに四方を囲まれていた。

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