伊東純也のパーフェクトデビューにファンの期待は高まるばかり。ランスは決定力のあるウインガーを欲していた (2ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

アシスト王の伊東に白羽の矢

 実際、そんな伊東がチームから求められているのは、目に見える"結果"だ。

 1950年代にサッカー史に名を刻むFWジュスト・フォンテーヌやFWレイモン・コパといったレジェンドを擁して黄金期を形成したスタッド・ランスは、たしかに国内屈指の名門であることは間違いない。

 だが、それは遠い昔話。その後は低迷期が続き、1990年代には財政破綻によって解散を強いられ、クラブ再建と名称変更を経験している。現在はフランスの多くのクラブがそうであるように、若手を育てて売ることを経営基盤とするクラブに生まれ変わった。

 1979年から遠ざかっていたリーグ・アン(当時の名称はディビシオン1)に復帰したのも、今から10年前の2012−13シーズンのこと。以降は2016年から2018年の2シーズンを除いてリーグ・アンに踏みとどまっているが、基本的には活躍した選手を売却してしまうため、リーグ・アン残留が毎シーズンの目標というのが実情だ。

 今シーズンの主力メンバーを見ても、チームの大黒柱でキャプテンを務める34歳のCBユニス・アブデルハミドを除けば、29歳の伊東はMFヴァロン・ベリシャと並ぶチーム2番目の年齢。ほとんどが20代前半の選手で構成されるなか、伊東にはそれなりの結果責任が問われる立場にある。

 昨シーズン12位だったスタッド・ランスは、今夏マジョルカに移籍した守護神プレドラグ・ライコビッチと、アブデルハミド、ヴァウト・ファース、アンドリュー・グラヴィロンの「DF三銃士」を中心とした強固な守備を強みとしていた。その一方、年間43得点は下から数えて6番目という少なさ。何より、チャンスメイク能力が決定的に欠如していた。

 しかも今シーズンは、チーム内得点王のウーゴ・エキティケがパリ・サンジェルマンに買い取りオプションつきのローン移籍で去ってしまった。そのため、いかにその穴を埋めて得点を増やせるかが、残留のためのカギと見られていた。

 そこで白羽の矢が立てられたのが、ベルギーで最多アシストを記録した伊東と、エキティケの代役としてアーセナルからローン加入した21歳のフォラリン・バログン。つまりこのふたりには、ゴールに直結するプレーが期待されているわけだ。

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