メッシの現在の真の実力は? ゴールが減ってもPSGで別格の扱いを受ける理由 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by KYODO

PSG加入でゴールが減った理由

 そして、立ち上がったメッシが、もっと狂っていた。ボールを受けると、削った年配ディフェンダーに再び挑むようなドリブルを仕掛け、あっさりと抜き去り、シュートまで行った。怒った時のメッシは本性をむき出しにし、変身を遂げたかのようだったが、それはやがて見慣れた景色になる。

「信じられない魔物を見た」

 そのディフェンダーは腰に手をつき、肩を落としていた。メッシはそうやって唯一無二の選手になっていったのである。

 ではPSG移籍後、メッシの実像はどうなっているのか。

 G大阪戦も、局面では神がかっていた。トップスピードでドリブルしながら、同じくトップスピードの味方に完璧なタイミングのスルーパスを出し、右からのクロスには瞬間的にスピードを上げてディフェンスの背後を取って飛び込むなど、攻撃センスの高さを見せつけている。とにかくボールを自在に操れることで、常にアドバンテージをとれるのだ。

 そんなメッシは、守備でも畏怖感を与えるのか、プレスに行こうすると焦ったG大阪のディフェンスがパスミス(メッシに当ててしまう)。これを拾ったネイマールがメッシに出し、強烈な左足シュートはGKのブロックにあったが、最後はこぼれ球をパブロ・サラビアが決めた。

 あえて言えばそのシーン、かつてのメッシならあっさり決めていただろう。

 猛暑のなかで移動もあり、浦和戦から中二日。疲労が重なったことは間違いない。しかしこの日は、他にも完全に彼のゾーンに入ったシュートがなかなか得点にならなかった。GKの好セーブもあったが、全盛期のようなシュートの踏み込みではなく、若干、腰が浮いて体が流れていた。それによって、コントロールも強度も甘くなったのだ。

 今まで入っていたシュートが入らないのは、昨シーズンも顕著だった。シーズン11得点で、1試合得点率は0.32点。数字は残酷だ。

 バルサ時代のメッシは、1試合1点以上を記録し、ボールを持つたびにゴールしている印象があった。シーズン70得点以上を記録したこともあるし、13シーズン連続でシーズン30得点以上を記録してきた。7度のバロンドール受賞は破格だろう。

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