久保建英に新天地レアル・ソシエダが寄せている評価と期待、そして課題は?

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Antonio Villalba/Real Madrid via Getty Images

「久保建英はレアル・マドリードの遠征に帯同せず、近日中にサンセバスチャン(レアル・ソシエダの本拠地)へやって来る」

 レアル・ソシエダのクラブ関係者からは7月15日の時点で、そう漏れ聞こえてきた。

 レアル・マドリードが所有権を持つ久保建英(21歳)のレアル・ソシエダ移籍は事実上、ほぼ決定している。ただ、完全な契約状態になるには、選手がメディカルチェックを受ける必要がある。今回の契約ではレンタルか完全移籍でもめたが、"折半"のような形で落ち着くことになると言われている。パスの配分(50%がレアル・ソシエダへ?)、買い取りオプション(50%のパスを保持することで、レアル・マドリードが優先的に買い取れることになる?)など条件面の細部調整が残っているという。

 しかし2022-23シーズン、久保がレアル・ソシエダを新天地にするのは決定的である。契約は2027年6月末までの5年契約、年俸はマドリード時代と同じ200万ユーロ(約2億6000万円)。また、移籍違約金は6000万ユーロ(約78億円)に設定されると言われる。

 スペイン挑戦4年目になる久保は、レアル・ソシエダで華やかなデビューを飾れるか?

レアル・マドリードでトレーニング中の久保建英。レアル・ソシエダ移籍が決定的となったレアル・マドリードでトレーニング中の久保建英。レアル・ソシエダ移籍が決定的となったこの記事に関連する写真を見る 以前から原稿で書いていたように、久保サイドはレアル・ソシエダでのプレーを強く求めていた。それぞれのクラブの妥協点を引き出し、希望を勝ち取ったことになるだろう。どのチームで久保が最も輝くか、その視点で見た場合、レアル・ソシエダは突出していただけに慶事だ。

 レアル・ソシエダはリーガ・エスパニョーラのなかで、FCバルセロナ、ベティスと同じ系統の「攻撃型」クラブである。能動的な戦いが基本。高い位置でボールをつなぎ、守備を攻め崩し、失ったらすぐに奪い返し、再攻撃する。攻撃のオートマチズムを感じさせ、「守備ありき」のチームではない。

 全体が引いて守り、守備の細かい決めごとのなかでフィジカル的なタフさを要求されるチームで、久保は力を出しきれなかった。ウナイ・エメリのビジャレアル、ヘセ・ボルダラスのヘタフェ、ハビエル・アギーレのマジョルカなどは、まさに典型だったと言える。結果として、久保の成長スピードは落ちた。

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